■事業概要

1. マンション市場の動向
全国の2017年新築マンション供給は77,363戸(前年比0.5%増)と堅調に推移した。その中で首都圏と近畿圏では市場の動向の違いが鮮明になっている。首都圏では供給戸数が35,898戸(前年比0.4%増)であり、平均価格は5,908万円(同7.6%増)と過熱感が高い。一方、プレサンスコーポレーション<3254>の地盤である近畿圏では19,560戸(同4.7%増)と供給が伸び、平均価格は3,836万円(同2.1%減)と買いやすい価格帯にとどまる。2018年1月~3月においては、首都圏での供給が増えた(前年同期比、首都圏13.2%増、近畿圏6.6%増)が、価格差は変わらない(首都圏5,968万円、近畿圏3,755万円)。また、マンションの契約率(契約戸数/発売戸数、2017年)で見ても、首都圏が68.1%に対して近畿圏は76.1%と好不調の目安とされている70%を年間通して上回った。近畿圏のほうが首都圏より消費者の手が届きやすい状況である。近畿圏での展開が主体の同社にとっては、好ましい市場環境と言えるだろう。

2. 同社のポジション
(株)不動産経済研究所が、2018年2月21日に発表した「全国マンション市場動向」によると、同社は、2017年の分譲マンション供給戸数で第2位(前年4位、前々年6位)に躍進し、マンション市場におけるポジションを着実に上げている。近畿圏での分譲マンション供給ランキング8年連続第1位(2017年)、名古屋市内で7年連続の第1位、東海・中京圏でも6年連続の第1位(2017年)を獲得しており、事業エリアでの強さが顕著だ。ランキングの傾向として、首都圏中心のデベロッパーが伸び悩むなか、近畿圏やその他エリアに強い企業が伸びており、同社はその筆頭格だ。近畿圏や東海・中京圏においては過去から地場の不動産業者等との信頼関係を築いてきたために土地の取得に強みがある点、顧客のニーズにマッチしたマンションを適正価格で供給している点、地域を絞った広告宣伝を行っている点などが特長である。ちなみに、近畿圏のワンルームを含むマンションの平均平方メートル単価が63.0万円(2017年)だったのに対して、同社のファミリーマンションの単価は57.5万円であり、同社の価格競争力は強みの1つだ。

3. 成長性の源泉
同社の際立つ成長性を支えるのが積極的な土地の仕入れである。直近(主に2018年3月期)の販売用不動産及び仕掛販売用不動産を同業他社(マンションデベロッパー部門を持つ主な企業)と比較するとその差は明らかだ。同社は仕掛販売用不動産の売上比が135%。3位の野村不動産の78%を大きく引き離しており、将来の成長のための土地の仕入れが十分できていることがわかる。また、売り切る力により、販売用不動産(完成在庫)に関しては、売上比で8%として低位を維持している。(1)営業力、(2)商品力、(3)財務力の3つの相乗効果が、積極的な土地の仕入を可能にしている。

(1) 営業力
同社はワンルームマンションの販売事業からスタートしており、確かな販売力を有する営業部門の存在が強さの源泉である。営業部門全体で1物件を一定期間に集中販売するために、社内競争が促され、営業員の士気が向上する。また、新入社員には管理職がマンツーマンで現場指導し成功体験を積ませる教育システムも有効に機能している。年齢・社歴に関係なく、成果次第で昇給・昇格(年2回)できる評価システムも透明性が高い。

(2) 商品力
同社では商品力の根幹として立地を重視している。長期にわたり資産価値が継続することを重視し、都心主要駅からワンルームマンションは徒歩5分圏内、ファミリーマンションは10分圏内を基準とする。また、自社で企画開発するために、リーズナブルな価格帯で、バランスの良い機能を備えたコストパフォーマンスの高い商品に仕上げるのが得意だ。

(3) 財務力
完成在庫を少なくし、早期の資金回収が可能となるために、財務にも好循環が生まれる。2015年8月には優れた財務内容が評価され、JPX日経インデックス400銘柄に選定されている。健全な財務内容は、金融機関やゼネコンとの交渉条件も有利にする。現状長期資金を中心に低金利での調達ができている。

積極的な仕入れ力、営業力、財務・資金調達力、商品力が相互に好循環し、強固なビジネスモデルが築かれている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 プレサンス Research Memo(3):圧倒的な仕入れ力、営業力、商品力、財務力で独自のビジネスモデルを構築