■業績動向

2. 事業セグメント別動向
(1) グローバルWiFi事業
ビジョン<9416>の2017年12月期の売上高は前期比31.8%増の10,392百万円、セグメント利益は同39.7%増の1,593百万円と大幅増収増益となった。同期間における海外渡航者数は前期比4.5%増の1,788万人※1と堅調に推移したほか、訪日外国人旅行者数も同19.3%増の2,869万人※2と引き続き好調に推移するなど市場環境が良好だったことに加え、WiFiレンタルサービスの認知度向上に伴い、個人旅行客やインバウンド需要の取り込みが進んだこと、また、季節変動の少ない法人需要の開拓や、顧客満足度向上につながるサービス施策に取り組んだことで、リピート利用者の積み上げを図れたことが大幅増収につながった。

※1 出入国管理統計をもとに算出。
※2 日本政府観光局(JNTO)統計。


2017年12月期のレンタル件数は前期比44.3%増の165.0万件となり、うち日本からの海外利用(日本→海外)は同46.9%増の130.2万件、日本利用(海外→日本)は同49.8%増の28.5万件、海外進出先での利用者(海外→海外、日本利用を除く)は同5.9%減の6.2万件となった。海外→海外のみ減少したが、これは海外拠点の新設がなかったことや訪日外国人向けの需要が引き続き拡大していることによるもので、利用件数そのものも少なく影響はほとんどない。

ARPU(1回当たりの顧客平均単価)は前期比で8.6%減となったが、これは一部サービス料金の値下げを実施したことに加えて、平均単価の低い個人向けの比率(件数ベース)が前期の49.2%から56.4%に上昇したことが主因となっている。

セグメント利益率は前期の14.5%から15.3%と0.8ポイント上昇した。利益率の改善要因としては、各国通信キャリアからのデータ通信サービスの仕入条件についてボリュームディスカウント等による改善を進めたことに加えて、2017年3月よりクラウド上でSIMを管理するクラウドWiFiサービスを開始し、クラウドWiFiルーターの導入を進めたことや販売効率の向上に向け各種施策に取り組んだことが寄与した。

クラウドWiFiサービスでは、クラウド上でSIMを管理するため、物理的なSIMカードの差し替えが不要になるといった特徴がある。従来は、ユーザーから返却されたWiFiルーターは一度、出荷センターでSIMの容量チェックや差し替えを行う必要があったが、クラウドサービスではこうした作業が不要となり、出荷センターにおけるオペレーションコストの低減につながった。また、従来は空港カウンター等に返却されたルーターはチェックのため一度、出荷センターまで戻す必要があったが、クラウドWiFiルーターでは、空港カウンターでそのまま保管できるため回転率の上昇や物流コストの低減にも寄与している。

クラウドWiFiルーターは既存品と比較して、電池の持ち時間が最大14時間と約2倍長くなっており、ユーザーの利便性向上にもつながっている。端末コストは既存品と同程度のため、出荷オペレーションコストの低減や販売効率の向上によって利益率が高まることになる。2017年12月末時点では出荷したルーターのうち、約50%がクラウドWiFiルーターに切り替わっている(2017年6月末時点では約20%)。同社では償却期間(2年間)が終わった端末から順次、切り替えていく方針となっており、2018年中には大半がクラウドWiFiルーターに切り替わっているものと予想される。ただ、クラウドサービスに対応していない国と地域もあること等の理由で、全てがクラウド対応品に切り替わるわけではない。

また、販売効率の向上や顧客満足度の向上施策として、AI活用型FAQやチャットシステムを導入し、コールセンターの人件費抑制に取り組んだほか、空港カウンターでの自動受け取りロッカー「スマートピックアップ」の増設(羽田空港や関西国際空港等)や、訪日外国人客向けサービス「NINJA WiFi®」の当日申込みを簡便にするセルフレジKIOSK端末「スマートエントリー」の増設などを行った。

法人需要の取り込み施策としては、クラウドWiFiに対応したサービス「グローバルWiFi for Biz」※を2017年7月より開始した。SIMをクラウド上で管理できる特徴を生かして、都度のレンタル手続や受取り返却を不要にし、ユーザーが社内で常備できるサービスで、海外出張が頻繁にある法人ユーザーにとっては利便性の高いサービスとなり、2017年12月末で1千件以上の契約件数になっていると見られる。利用に応じた課金モデルとなるが、月額課金収入も伴うため、同社にとっては安定した収益源になる取り組みとして期待される。

※実際に利用した日数分のレンタル料金が使用データ容量に応じて課金(670~1,270円/日)。利用には、レンタル料金月額970円が必要。


なお、四半期ベースで見ると当第4四半期(2017年10月-12月)は、売上高で前年同期比27.1%増の2,636百万円、セグメント利益で同8.7%減の224百万円と増収減益となり収益性が低下したように見えるが、これは業績が当初計画を上回って推移したこともあり、2018年12月期以降の更なる成長を見据えた投資を前倒しで実施したことが主因となっており、一時的なものと見ることができる。

(2) 情報通信サービス事業
2017年12月期の売上高は前期比2.2%増の7,104百万円、セグメント利益は同14.4%増の1,172百万円と増収増益となった。主要ターゲットであるスタートアップ、ベンチャー企業の取り込みが引き続き好調に推移したほか、CRMによる継続取引の積み上げと、アップセル/クロスセル戦略が順調に進んだことにより、セグメント利益率も前期の14.7%から16.5%と1.8ポイント上昇した。商材としては、主力の通信サービス関連に加えて、2016年6月より取扱いを開始した電力サービス「ハルエネでんき」がコストメリットの大きい飲食店向けを中心に伸長した。

なお、四半期ベースで見ると当第4四半期は売上高で前年同期比0.3%減の1,725百万円、セグメント利益で同30.1%増の285百万円となり、売上高で微減収となっている。これは売上単価の大きい携帯電話サービスの比率が低下した影響による。法人向け携帯電話サービスについては、手数料ビジネスではなく端末1台当たりのコストを売上、仕入の両方に計上しているため売上げへの影響が大きくなる。ただ、利益面では他の主要商材と影響度は変わらないため、携帯電話サービスの売上構成比が低下すれば利益率は上昇することになる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 ビジョン Research Memo(6):個人利用浸透が進み、グローバルWiFi事業は前期比30%以上の大幅増収増益に