■今後の見通し

3. クロスチャネル対応マーケティングプラットフォームの構築に向けて
エイジア<2352>は中期経営ビジョンとして、「クロスチャネル対応マーケティングプラットフォーム」の構築を実現していくことを最重要課題として取り組んでいる。「クロスチャネル対応マーケティングプラットフォーム」とは、消費者が欲しい情報を、最適なタイミング、かつ最適なチャネル(メール、LINE、SMS、アプリ、電話、DM等)で配信することを実現するマーケティングオートメーションシステムの進化版を指す。最適なタイミングやチャネルを判別するために、消費者データ(ビッグデータ)を収集し、AI技術を用いて迅速に分析・整理し、運用できるプラットフォームを今後3年かけて開発していく計画となっており、2020年3月期のサービス開始を目指している。

AI技術に関しては専門企業の技術を活用して行く方針で、2015年にはメタデータ(株)と資本業務提携を締結して開発を進めているほか、2017年6月にはAI技術開発のベンチャーである(株)ABEJAが提供するパートナーシッププログラムに参画し、ABEJAのAIエンジンを使ってマーケティングオートメーションの実証実験を11月より開始している。

実証実験では、マーケティングオートメーション機能で重要となる「最適化」に関する4つの変数(ターゲット、タイミング、チャネル、コンテンツ内容)のうち、タイミングとターゲットの2項目について検証を行っていく。タイミングではメールの配信時間の違いによる反応率の変化を、ターゲットではメール配信後の反応の違いを顧客属性(ターゲット)ごとにAIエンジンを使って検証していく。今回は主要顧客3社と個別に約1週間の期間で実証実験を行い、2017年内に実験結果を検証し、今後の製品開発に生かしていく考えだ。

AIエンジンに関してはメタデータとABEJAのいずれかを採用する方針となっている。ABEJAについてはディープラーニング技術で優れているものの、パターンマッチングスピードについてはメタデータのほうが優れている。今回の実証実験ではスピードは求めていないため、今後実証実験の回数を増やしていくなかで、最適なAIエンジンを採用することになりそうだ。AIエンジンを搭載した高精度な「クロスチャネル対応マーケティングプラットフォーム」が完成すれば、同社の収益けん引役に育つことが予想されるだけに、今後の動向が注目される。

なお、マーケティングオートメーションシステムの市場は、米国で2010年以降に立ち上がり、日本でも2014年に入って日本オラクル<4716>やセールスフォース・ドットコム、IBM(日本アイ・ビー・エム(株))などがサービスの提供を開始し、市場が立ち上がり始めている。市場調査会社の予測によれば、同市場は2015年(見込)の272億円から2020年には559億円と年率14%増ペースで拡大する見通しとなっている。ここ数年、参入企業も増加し競争が激化してきてはいるものの、同社では電子メール配信ベンダー大手としての強みを生かすことでMA市場でのシェアを拡大していく考えだ。

また、AIエンジンを活用したソリューションサービスの市場についても、今後高成長が見込まれている。なかでも同社の対象領域であるCRM/コールセンター市場では2016年の271億円から2021年には1,092億円に、広告・マーケティング市場では2016年の237億円から2021年には1,530億円とそれぞれ数倍規模へ成長する見通しとなっている。AI技術を活用したソリューションサービスをいかに早く開発、提供していけるかが、今後の成長性を大きく左右するとも言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 エイジア Research Memo(8):AIエンジンを活用した実証実験プロジェクトを開始