■企業特長

2. 同社の優位性
(1) 独自のPEOスキームによる人材ニーズの創出と顧客の囲い込み
アウトソーシング<2427>は、「国内製造系アウトソーシング事業」が、メーカーの生産拠点の海外移管や産業構造の変化(鉱工業からIT及び土木建築産業へのシフト)、国内人口の減少などにより、中長期的には縮小することが予想されていることや「2018年問題」の顕在化を見据えて、新たな領域での人材ニーズに対応する独自のPEOスキームを2014年9月に立ち上げた。そもそも製造工程に従事する労働者は、短いサイクルでの変動領域に対応する外部派遣社員(月々の生産変動を調整するための領域に対応)と長期サイクルでの変動領域に対応するメーカー直接雇用の期間社員(海外生産移管やリーマンショック時のような大量の雇用契約の打ち切りのリスクに備えた領域に対応)、メーカー正社員の3層構造になっているが、本スキームでは、これまでの外部派遣社員で賄ってきた短期の生産調整領域ではなく、メーカー直接雇用の期間社員で賄ってきた長期領域での人材ニーズに対応するところに特徴がある。

具体的には、メーカーにグループ子会社(株)PEOの運営する「PEO会」に会員として参画してもらった上で、これまでのメーカー直接雇用の期間社員をPEOの正社員(無期雇用社員)として受け入れるとともに、メーカーに派遣する形を取る。派遣先メーカーにとっては、これまで長期雇用で効率性を高めてきたメーカー直接雇用の期間社員について、5年を超える継続雇用には一定の制約が課されることになったところを、本スキームにより期間無制限で活用することが可能となる。特に、同社の得意とする自動車メーカーは製品ライフサイクルが比較的長期になることもあって、この領域への依存度が高く、潜在的な需要は大きい※1。一方、同社にとっては正社員(無期雇用社員)を抱えることによる固定人件費のリスクがあるが、その反面、高騰が続いている採用費の削減を図ることができる上、顧客にとって重要な人材をプールするためのプラットフォームを提供することにより、契約単価の向上※2やスケールメリットの追求、顧客の囲い込みなど先行者利益を享受できる可能性は高い。もちろん、社員にとっても同社が安定雇用の担い手になることによる恩恵を受けるため、社会的な意義も大きい。

※1 自動車メーカーが直接雇用する期間社員約6.5万人からのシフトを見込んでいる(現時点の計画では2020年には少なくとも2万人を受け入れる想定)。
※2 これまでの短期サイクルの領域と比較して、契約単価が3割以上増加する想定となっている。


(2) スクール事業を生かしたキャリアチェンジによる人材育成
同社が注力しているIT及び土木建築分野においては、スクール事業を生かした人材育成カリキュラムによる差別化を図っている。具体的には、同社グループのKENスクールが顧客の通信キャリアと共同で開発したIT系育成プログラムや、大手ゼネコンOBと共同で開発した土木建築系の教育プログラムを活用することで、未経験・異分野からのキャリアチェンジによる人材育成を推進しており、成長産業で技術者が不足しているIT及び土木建築産業向けの事業拡大を支えている。すなわち、技術系派遣会社が抱える「ハイエンド技術者の採用困難によってトップラインが大きく成長できない課題」を、同社は独自のスキームで克服していると言える。

(3) 安定したキャッシュ・フローを生み出す事業ポートフォリオ
同社は、かねてより「国内製造系」に依存した景気変動の影響を受けやすい事業特性からの脱却を図るため、1)成長性や付加価値の高い「国内技術系」の強化、2)景気変動の影響が少ない公的業務や米軍基地向け事業への進出、3)コンビニ業界向けなど「国内製造系」とは景気サイクルの異なる分野への参入、のほか、4)「国内製造系」においてもPEOスキームによる長期事業領域へのシフトなどに取り組んできた。その結果として、安定したキャッシュ・フローを生み出す事業ポートフォリオも同社の強みとなっている。今後もM&Aを成長戦略の軸に据える同社にとっては、大きなアドバンテージになるものと評価できる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 アウトソシング Research Memo(5):独自スキームや教育カリキュラムによる人材ニーズへの対応に強み