■中長期の見通しと戦略

1. 農業政策の変化と木徳神糧<2700>の存在意義
国内の米穀消費そのものは低下が続いており、その点から同社にとっての市場そのものの拡大は期待できない。しかし、米穀の流通においては、コンビニエンスストアなど新たなルートが広がっており、また外食チェーンや惣菜、弁当などの所謂「中食市場」は拡大傾向にある。同社はこのような新流通ルート(量販店、コンビニエンスストア、外食チェーン等)に対して太いパイプを有していることから、米穀市場全体は伸び悩んでも同社の米穀事業が成長する可能性は高い。

さらに、中長期の視点から同社にとっての追い風は、農業政策における自民党政権の変化だ。既に自民党はJA全中(全国農業協同組合中央会)に対して「自律的に新たな組織に移行すること」を提言、JA全農に対しては「株式会社化」を提言し、このような農協改革は大筋で決着したが、米穀市場が今までの全中・全農の集中・支配体制から自由市場の方向に向かっていくことは確かであり、同社のように信用力、資金力、精米能力、全国レベルでの販売網を有している大手卸業者にとってプラスとなるのは間違いないだろう。米穀市場の自由度の高まりとともに、同社の存在意義は一段と高まっていくと予想される。

もう1つの重要な変化は、今後議論されていくであろう海外との米穀取引の自由化だ。米国のトランプ政権がTPP離脱の大統領令に署名したことから、今後のTPP交渉の行方は全く不透明である。しかし、トランプ政権はTPPに替わり2国間交渉によって日本の農業市場の開放を迫ってくる可能性があり、日本の農業市場は大きく変わる可能性はある。最終的に国内米穀市場及び同社にどのような影響が出てくるかはまだ不透明であるが、少なくとも現状より後退することは考えにくい。輸出及び輸入だけでなく3国間貿易も含めて少しでも米穀市場の自由度が増せば、大手米卸としての同社にとっては事業拡大のチャンスと思われる。

2. 今後の基本方針
同社は2016年12月期を最終年度とする中期経営計画を掲げていた。しかし残念ながら、この計画の数値目標(営業利益1,210百万円)を達成することはできなかった。しかし、以前にも述べたように、経営計画の目標は必ずしも定量的な数値目標だけでなく、企業の体質変化などの定性的な目標達成も重要である。この点で同社の場合、過去3年間で惣菜事業からの撤退、鶏肉事業子会社の売却などスリム化を進めた点は評価に値するだろう。

また、上記のように現在の同社を取り巻く環境、特に米穀市場の先行きに不透明感が増していることから、現在新しい中期経営計画を検討中であり、市場環境がもう少し明白になった段階で発表される見通しである。それまでは、前中期経営計画で掲げてきた下記のような施策を引き続き粛々と進めていく計画だ。

(1) 米穀事業
a) 国内: 生産者に近づく体制づくりの進化
販売における量の拡大と質の向上
生産体制の再構築
b) 海外: コメビジネスのグローバル展開
国産米輸出の拡大と市場の開拓

(2) 食品事業
a) 付加価値商品の拡大と海外展開

(3) 飼料事業
a) 販売数量の拡大
b) 用途転用の促進

(4) 鶏卵事業
a) 加工品の販売強化
b) 独自商品の開発

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 木徳神糧 Research Memo(6):TPPの先行きは不透明ながら国内の農業政策の変化は追い風