■同業他社比較と株主還元策

1. 同業他社比較
アフィリエイト運営会社の大手はインタースペース<2122>のほかファンコミュニケーションズ、アドウェイズ、バリューコマース、リンクシェア・ジャパン(株)(未上場:楽天<4755>の子会社)の4社が挙げられる。売上高規模はその他の事業も展開しているため、各社100~400億円とバラつきがあるものの、同社も含めた5社合計のアフィリエイトサービスにおける業界シェアは6割程度とみられる。

このうち、ファンコミュニケーションズは2017年3月時点でパートナーサイト数が220万サイト、広告主ID数で3,300件を超えており、業界最大規模となっている。中小企業向け広告ビジネスを長くやっており、eコマース向けの依存度が比較的高いのが特徴だ。業績面ではアドネットワーク広告事業が単価下落によって低迷しており、2017年12月期の経常利益の伸び率は1ケタ台と4社の中では最も低くなっている。ただ、経常利益率は唯一、10%を超えており、高収益性は維持している。アドウェイズはモバイル向け比率が5割弱(対国内広告売上高)となっており、ゲーム系に強みを持つ。海外事業やアプリ・メディア事業を展開しており、いずれもまだ収益化していないことから全体の利益率は低くなっているが、2018年3月期はこれら事業の収益改善や新規事業の寄与により大幅増益を見込んでいる。バリューコマースはヤフー<4689>の子会社であり、パソコン向けの比率が7割弱(件数ベース)と圧倒的に高いことが特徴で、2017年3月時点のパートナーサイト数は66万サイト、広告主数は1,553件となっている。金融カテゴリーの中で利益率の低かった大型案件から撤退したため、2017年12月期の売上高は減収見込みとなっているが、利益ベースでは増益を見込んでいる。従来は金融向けが5割弱を占めていたが、直近四半期では3割強まで低下している。

これら上場企業の中で、インタースペースの経常利益率は2017年9月期見込みで3.9%と相対的に低いのは、インターネット広告事業において、提携サイトや広告主開拓のためのコストを積極的にかけていることや、モバイル向けの売上比率が約7割と高いことが要因と見られる。同社では今後、生産性向上に取り組むことによって利益率を向上していく方針となっている。

なお、株価指標ではEV/EBITDA倍率で6倍台と他3社に比較して低い水準となっている。EV/EBITDA倍率とは、その企業を買収する場合に、その企業価値(時価総額+有利子負債−現預金:有価証券)に対して、期間収益(営業利益+償却費)の何年分で回収できるかを簡易的に指標化したものとなる。倍率が低いほど時価総額が過小に評価されていることになる。EBITDAについては今後の成長性も加味する必要があるため、単年度の数字だけで判断するのは早計なものの同社の業績見通しは良好であり、EV/EBITDA倍率の格差は今後縮小していくものと予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 Iスペース Research Memo(9):EV/EBITDA倍率で見ると同業の中で最も過小評価されている