■中長期成長戦略における事業セグメント別動向

3. フード&パッケージング事業
三井化学<4183>のフード&パッケージング事業は、2026年3月期において営業利益400億円を目標としている。2016年度を起点に2026年3月期までの9年間の営業利益のCAGR(年平均成長率)は7.7%となる。フード&パッケージング事業においては新製品創出の中の農薬新規5原体のローンチが最も注目される分野だが、国内包装材料なども地味ではあるが着実な成長が見込まれている。

(1) 農薬事業の進捗状況
同社の農薬事業は年商約500億円規模で国内シェア10%強というポジションにある。主たる市場は国内で、売上高の3分の2が国内向けとなっている。同社はその事業規模に照らすと異例とも言える、5つの有望な農薬原体を有しており、市場投入を目指して研究開発を続けている。その中の1つであるトルプロカルブ(殺菌剤)は2016年3月に3つの製剤として上市された。今後は2019年にブロフラニリド(殺虫剤)と除草剤が上市されてくる見通しだ。いずれの農薬も大型薬になることが期待されており、販売地域も国内のみならず海外市場(アジア、欧州)を念頭に置いたものとなっている。

同社は、農薬5原体すべてが上市される2023年3月期において、農薬事業の売上高1,000億円、海外比率50%という長期目標を掲げている。同社単独の販売力には限界があるため、早くからその布石を打ってきている。これまでに、ブラジルIharabrasの増資引き受け(2015年8月)、タイSotusの株式追加取得(2016年1月及び2017年3月)、ベトナムCuulongの株式取得(2016年8月、出資比率20%)、インドで合弁企業Solinnos Agro Sciencesの設立合意(2016年5月)、ベルギーBelchimへの出資(2017年2月)などを行ってきた。研究開発と並行して販売力の面でも、今後も体制構築が続けられる見通しだ。

(2) 包装材料とコーティング・機能材
国内の包装材料市場は伸びが続いている。包装の重層化や個包装化の流れが続くほか、ネット通販の拡大で宅配便や小包の物量が増加し、それに関連した包装材も伸びが続いている状況だ。包装については過剰包装を社会問題視する向きもあるが、現実的に必要なことは言うまでもない。同社は社会的課題の解決に資するパッケージ材料の提供で、自社の成長につなげていく方針だ

コーティング・機能材製品群では、同社が強みを持つイソシアネート誘導品の中から、コーティング材(Coating)、接着剤(Adhesive)、シーラント材(Sealant)、エラストマー(合成ゴムの一種)(Elastomer)の4つの製品群について、頭文字から“CASE分野”とし、この領域の強化・拡大を目指している。最近の進捗としてエラストマーのFORTIMO®がテニスラケット用ストリング(絃)に採用された。高弾性と耐久性に特長があり、更なる用途展開が注目される。また、接着剤分野において、マレーシア拠点の食品パッケージ向け接着剤の能力増強に取り組んでいる。2017年9月運転開始予定で、従来比75%増強し年産35,000トン体制となる見通しだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之


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情報提供元: FISCO
記事名:「 三井化学 Research Memo(10):農薬の海外展開に向けた準備が進む。国内包装材料にも成長を期待