■ジェイリース<7187>の事業概要

1. 家賃債務保証市場の概況
賃貸住宅の入居時において、連帯保証人をめぐる問題は増加の一途をたどっている。核家族化、少子高齢化、外国人の増加、無縁社会の広がり、家族関係の希薄化などが進展したために、連帯保証人を見つけられない人やできれば連帯保証人を頼みたくない人が増加した。家賃債務保証とは、住宅の賃貸において連帯保証人が果たしてきた役割を、専門の保証会社が担い、入居予定者・不動産仲介会社・不動産オーナーの3者の契約関係を円滑に行うための仕組みである。入居者にとっては、連帯保証人を確保できなくても入居が可能であるとともに、万が一支払いの遅延をしてしまっても円滑な立替払いにより家主との関係を良好に維持できるメリットがある。不動産オーナーにとっては、滞納発生時の家賃保証だけでなく、従来入居が困難だった人にも賃貸が可能になるため、空室率の抑制が期待できる。さらに、不動産仲介会社にとっても仲介料の増加や事務手数料収入が期待できる。家賃債務保証は3者がWin-Winの関係を維持できる点で、時代のニーズに合致したサービスである。

家賃債務保証の市場規模は67,510百万円(2014年度、帝国データバンク)と推定されており、年率13.2%(2010年度−2014年度)で成長してきた。国土交通省資料によると、賃貸借契約において家賃保証会社の利用割合は39%(2010年)から56%(2014年)に4年間で17ポイント上昇しており、直近の調査結果では、69%まで上昇しており、市場の成長を裏付けている。今後は民法改正(債権法、5月に成立)も追い風になりそうだ。この改正では、連帯保証人が保証する金額の極度額(上限)が設定されるため、連帯保証人の担保価値が低下する。結果として家賃保証会社の利用を必須とする不動産オーナーが増加することが予想される。法の施行は2~3年後になる。

2. 同社ビジネスモデルの特長
同社の家賃債務保証事業におけるビジネスモデルの主な特長は、(1)店舗網と人数、(2)きめ細かな商品・サービス、(3)厳格かつ迅速な審査と高い回収率、の3点である。

(1)店舗網と人数
2017年5月時点で全国21店舗を展開しており、店舗を介した地域密着が同社の強みである。地域別には、地元の九州で9店舗、近畿・中四国で1店舗、東海で1店舗、関東甲信越で8店舗、東北北海道で2店舗(5月開店の札幌を含む)である。店舗が多いということはスタッフ人数も多くなり、同社単体で276人(2017年3月期)が所属している。同社の店舗数とスタッフ人数の多さは、同業他社と比較すると明確になる。同業A社は11店舗、112人、同業B社は7店舗、83人でそれぞれ全国をカバーしており、同社の店舗網の緊密さと人数投入量の多さが浮き彫りになっている。同社の営業対象は主に中堅・中小の不動産仲介会社であり、約11,000件という圧倒的多数の協定件数(不動産会社との契約)を持つことを可能にしている。

(2) きめ細かな商品・サービス
同社の強みである。利用者のニーズに応じて、一括払い、年払い、月払いなどの多様な保証料の支払い形態が選択でき、同業他社でこれらをすべてそろえる企業は少ない。また、不動産会社からのリクエストによるカスタマイズも積極的に実施し、個々の不動産会社との信頼を勝ち得るのに貢献する。

代位弁済時の支払日に関しては、同社が「3営業日後」に支払うのに対して、同業他社では「月末」や「月2回」、「退去精算後」などであり、同社の迅速対応は際立っている。

(3) 厳格かつ迅速な審査と高い回収率
改善の余地はあるものの、回収率は高い水準にある。審査の厳格さの指標の1つとして、代位弁済の発生率があるが、同社は直近6.3%(2017年3月期)であり、平均的と言われる7.1%よりも低い。前年(2016年3月期)よりも0.9ポイント上昇したが、この要因は都市部(特に東京など)の代位弁済発生率が高いためである。代位弁済の回収率は、94.8%(2017年3月期)であり、この数字が意味することは、20件の滞納のうち19件は回収しているということであり、高い水準である。年々低下してきているが、これも都市部での回収率の低さが影響しており、売上げ(保証料)との対比から特に懸念はない。厳格かつ迅速な審査を支えるのは、専門的なデータとノウハウを持つ審査部門の存在がある。収入と賃料のバランス、転居理由などから入居者チェックをするほか、新聞記事検索、代位弁済情報データベースなどを活用して、徹底的かつ迅速に審査を行う。

同社のビジネスモデルは、店舗と人で都市部を中心に面展開し、顧客のニーズに徹底的に応えることで信頼を勝ち取り、入居者審査では科学的なアプローチも取り入れて厳格にリスクを管理するという“地域密着+リスク管理徹底ビジネスモデル”である。

3. 成長性の比較
同社は、同業他社と比較して、高い成長性に特徴がある。2013年3月から2017年3月期までの4年間で比較すると、同社が年率27.0%、同業A社が22.9%、同業B社が10.0%となっている。同社の成長の原動力は出店であり、出店ペースを決めるのは人材育成のスピードや黒字化までの時間である。現状、人材育成や黒字化までの時間を考慮した適切な出店ペースは、年に2〜3店舗だと考えられる。同社が進出していない大都市エリアはまだ広く残っているため、しばらくは店舗当たりのポテンシャルの大きな都市部で、着実なペースの出店が続くだろう。

一方で、経常利益で比較すると、同社312百万円(2017年3月期)に対して、同業A社326百万円(2017年3月期)、同業B社598百万円(2017年3月期)となっており、収益力の向上が課題となる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)


<MW>

情報提供元: FISCO
記事名:「 Jリース Research Memo(3):店舗数と人数で面展開する“地域密着+リスク管理徹底ビジネスモデル”