■中長期の成長戦略

3. GAME事業の均衡市場でのシェア確保
GAME事業が属するアーケードゲーム市場は、少子化やスマートフォンとの競合などの要因から市場の縮小が続いているのは良く知られたところだ。しかしながら出店地域の選定や、店舗の機種の選定、販促活動の工夫などの施策を通じて、成長の糸口はまだまだ見い出せるというのがSDエンターテイメント<4650>のスタンスだ。

同社は2016年3月期から2017年3月期にかけて3店舗閉鎖・2店舗出店のスクラップアンドビルドを進めた。売上高は減収となったが、利益面では増益を確保したのは前述のとおりだ。

2020年3月期かけてはさらに施策を進めて、収益の一段の底上げを狙っている。その具体的な施策は、1)集客力のあるゲーム機の集中投下、2)1000坪級の大型店を縮小し効率性の向上、3)上記2施策で余剰となったゲーム機の収益化、の3点だ。

(1) 集客力のあるゲーム機の集中投下
その中身は、新型のUFOキャッチャーを2017年3月期と2018年3月期の2年間で合計300台を導入するというものだ。2017年3月期は第4四半期に165台を投入した。第4四半期のGAME事業の収益は売上高は前期比横ばいの600百万円、営業利益は同51%増の42百万円となり、明確に効果を確認できた。同社は2018年3月期中に残り135台を導入し、UFOキャッチャーに代表されるプライズゲームの売上高を前期比30%増とすることを狙っている。

(2) 1000坪級の大型店を縮小し効率性の向上
大型店舗の縮小・効率化も既に前期第4四半期から着手している。札幌市・白石区にあるディノスパーク札幌白石店は2017年5月末で閉店し、そこに、前述したようにSDフィットネス札幌白石店が出店することが決定している。また外部からのテナント誘致も計画している。

(3) 余剰となったゲーム機の収益化
上記2施策で余剰となったゲーム機の収益化は、同社が「チョイ置きモデル出店」と呼ぶものだ。具体的には量販店やスーパーなどにある小規模の遊休スペースに、旧型のクレーンゲーム機を中心に、ゲーム機を5台~10台程度設置・運営する出店モデルを言う。ゲーム機械の維持管理責任が1つの壁となって他社にはハードルが高いが、北海道内に14店舗を展開する同社はSC運営事業者等から信頼を得ており、交渉がまとまりやすいという強みを有している。1店舗当たり5台~10台を設置するのを基本パターンと考えており、20ヶ所への設置を目指す予定だ。

同社の今回のGAME事業の成長戦略は、効果が現れるタイミングが早い点に特長があると考えている。同社は2018年3月期のGAME事業の売上高を2,340百万円(前期比112百万円増)、営業利益154百万円(同130百万円増)と予想している。2017年3月期から2020年3月期の増収額233百万円の約半分を2018年3月期に達成するという形だ。営業利益については情報が開示されていないが、売上高と同様の流れと推測される。これは同社が無理に前倒しで進めているわけではなく、施策自体に即時性があることが要因だ。

GAME事業の一連の施策で弊社が最も評価する点もこの即時性だ。即時性があるということは資金的な面も含めて比較的容易であることを示唆している。また、効果が出ない場合には、早期に対応策を打って、目標までの期間内に挽回を図ることも可能だ。上記の3つの施策のうち、新型クレーンゲームの導入は、北海道内では同社ともう1社の大型店舗だけが大量導入しており、地場有力競合店は設備投資額が大きくなるため導入見送りを決めた。これは同社にとって有利な状況と言える。札幌白石店の撤退の効果は言うまでもない。残るポイントはチョイ置きモデル出店が想定どおり進むかだが、この点は今期の進捗を見守りたい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 SDエンター Research Memo(7):新型機導入と“チョイ置きモデル出店”で成長を狙う