■今後の見通し

1. 中期経営計画
ODKソリューションズ<3839>は、4月26日の決算発表と同時に2017年3月期の状況を踏まえて経営環境変化に対応し、前年の「新しいODKへのモデルチェンジ」を目標とする計画をロールオーバーした中期経営計画(2018年3月期から2020年3月期)として公表した。基本戦略は前年をほぼ踏襲した内容であり、1)アライアンス・M&Aを活用した新規事業創出、2)商品ラインアップ充実、戦略的営業展開、3)業務推進方法の見直し、固定費の変動費化、の3点である。前年との相違点は、基本方針の3点目が「意識・風土改革」から「選択と集中」に変わったこと、基本戦略の3点目の一部が「リソースの適正配分」から「固定費の変動費化」へと変わったことである。

また、具体的な数値目標として、「2020年3月期単体売上高5,000百万円、経常利益400百万円、年10円の安定配当を堅持」が打ち出された。

2. 2017年3月期の重点課題と取組みの成果
前年に公表された中期経営計画(2017年3月期から2019年3月期)では、1)各種試験業務の受託、2)UCARO・マイナンバー関連サービスの拡販、3)機能別オペレーションへの移行、機能明確化と集約、の3点を2017年3月期の重点課題として取組みが成された。

2017年3月期業績は、各指標とも年初計画を上回る好業績を収め、重点課題に対する取組みも進展、評価できる内容になった。具体的には、教育業務では、入試アウトソーシングサービス新規受託が4校(累計37校)、Web出願システムが新規22校(累計74校)と拡大した。UCAROについては、2016年7月にサービス提供を開始して、今回初めての受験シーズンを迎え、採用校は15校、利用受験者数は約10万人と順調なスタートを切った。

証券・ほふり業務では、マイナンバー関連サービス提供として、管理システム(ASP型/オンプレミス型)の受託社数が拡大。2015年6月にSBI-TWTとマイナンバー管理システムの開発・運用で協業し、情報漏洩リスクを低減したシステムを構成しており、証券・金融業界等情報セキュリティに厳格な対応が求められる企業からの信頼性評価が高い。

さらに、2016年8月にファルコホールディングスと業務・資本提携し、ファルコグループの中核企業であるファルコバイオシステムズが手掛ける臨床検査事業に関するシステム運用を同社が受託開始した。教育、証券に次ぐ3番目の事業の柱となる新しい事業領域へ進出を果たした。システム運用サービスにおいて、情報セキュリティ面で評価の高い同社の実績が、医療関係事業でも認められたものである。

一方、機能別オペレーションへの移行、機能明確化と集約では、2016年4月、教育システム部を顧客別(大学別)組織から機能別組織へ再編(5課制から6課制へ変更)し、開発のエンジニアを大阪本社に集約したほか、東京地区における営業人員を強化した。体制再編の過渡期として、外注費(同社勘定科目は「支払手数料」)の増加等もみられたが、売上高の拡大でカバーしている。今後は営業増強によって、UCARO・マイナンバー関連サービスの拡販にプラス寄与すると考えられる。

3. 2018年3月期の重点課題の概要と取組み
今回公表された中期経営計画における2018年3月期の重点課題は、1)医療システム開発への参画、AIサービスの提供、2)UCARO・マイナンバー関連サービスの拡販、3)業務別・顧客別収益性管理の徹底、外部リソースの有効活用の3点。

医療システム開発への参画としては、前記のファルコバイオシステムズの臨床検査システムの運用受託とともに、ファルコホールディングスと更なる医療分野への展開を検討中である。例えば、他のサービスノウハウの流用を視野に入れた既存サービスの充実や、ファルコホールディングスと両社間でプロジェクトチームを設け医療情報システムの充実を目指したサービスを提供すること等である。AIサービスの提供については、リアルグローブと業務・資本提携し、最先端技術を用いたビジネスプラットフォームの開発を検討している。例えば、医療分野においては、一般顧客からの問い合わせに対して、BOT※が過去のデータベースから機械学習で判断した最適な回答案を担当者に提示し、担当者が回答するシステム等である。

※Twitterの機能を使って作られた、機械による自動発言システム。語源はロボットから来ている。


UCARO・マイナンバー関連サービスについては、既にサービス提供を開始しており、大きく拡販モードに移ってきている。UCAROについては、2020年の教育制度改革に向けて、高大接続・学修支援プラットフォームとしての実現を検討している。マイナンバー関連サービスについては、マイナンバー利用が順次範囲拡大される見込みで、同社の安全かつ簡易的なデータ収集方法システムの受注機会増大が期待される。

業務別・顧客別収益性管理の徹底については、同社グループは単一セグメントであり、外部公表はされないが、今後の事業拡大に合わせて、内部管理用の収益管理の精度向上を図るものである。外部リソースの有効活用に関しては、ナカバヤシグループとの協業において、プリンティング業務の委託、アウトソーシング業務の連携強化、試験運営支援等、同グループの設備や要員派遣というリソース活用を図る。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田 秀樹)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 ODK Research Memo(6):アライアンス、M&Aを活用した新規事業創出、商品ラインアップ充実を図る