■ヒマラヤ<7514>の同業他社比較

スポーツ用品小売で同業大手のゼビオホールディングス(以下、ゼビオ)<8281>、アルペン<3028>との直近の経営数値の比較をまとめてみた。

1. 月次売上高、売場面積
既存店売上高の前年同月比伸び率推移を見ると、2016年以降は7月を除いて3社ともほぼ前年同月の水準を割り込んで推移してきたが、ヒマラヤは3月についても前年同月割れとなった。売上比率が相対的に高い西日本エリアでは、ウインターシーズンにおいて暖冬、少雪の影響が大きかったほか、3月の気温も例年より上昇せず春物商戦が振るわなかった。また、カジュアル商材を品揃えしない同社の商品政策により、好調なスニーカー市場を取り込めなかったことなども要因と見られる。

売場面積については、2015年までは3社とも出店数の増加に伴い拡大傾向が続いていたが、2016年に入ってアルペンが不採算店舗の見直しを始めたことにより、頭打ちの傾向となっているほか、ヒマラヤについても今回、大量閉店を実施したことで、売り場面積は減少に転じている。EC市場の拡大や異業種参入によって市場環境も変化してきており、スポーツ用品量販店の店舗戦略についても変化しているものと考えられる。ヒマラヤにおいては、今後の新規出店について慎重に進めていくスタンスであり、実店舗での売場面積は伸び悩む可能性があるものの、東北・北海道など未進出エリアがまだ残されていること、新業態店舗でのマスターゲットでの展開が期待されること等から、長期的には売場面積を拡大していく余地はあると見られる。

2. 収益性指標
収益性について比較すると、売上総利益率は3社の中でアルペンが安定して40%台をキープしており最も高い水準となっている。ゼビオとヒマラヤは35~40%の水準で推移していたが、直近四半期(2016年12月〜2017年2月)においては、ヒマラヤの売上総利益率が33.1%と最も低い水準にまで落ち込んだ。前述したように、デフレ環境下での販売価格ミスマッチに対応した値引き推進と、冬物の販売ピークに暖冬の影響を受けたことが売上総利益率の低下要因となった。ただ、在庫水準は既に適正化されており、今後は売上総利益率も改善していくことが予想される。

在庫回転率(売上原価÷期中平均在庫) を見ると、新規出店用の在庫積み増しや売上高の季節変動要因などにより、ヒマラヤの場合は四半期ごとにバラつきが出るものの、平均で見れば2015年以降はゼビオとヒマラヤがほぼ同水準となり、アルペンがやや低い水準で推移している。直近四半期で見ると、ヒマラヤの在庫回転率は前年同期の0.54回から0.62回と大きく改善している。2016年8月期第2四半期は暖冬によるウインタースポーツ用品の在庫が増加したが、2017年8月期第2四半期に前期の増加分も含めて在庫処分を進めた結果、適正な在庫水準になっていると判断される。

販管費率に関しては、各社ともここ数年は人件費の上昇をその他経費の削減によりコントロールする動きとなっている。3社の比較ではアルペンの水準が高くなっているが、これは他社に対して人件費率の水準が高いことが要因と考えられる。売上規模が同水準のゼビオとの比較で見ると、全従業員数が1割程度多いほか、正社員数の比率も高いことが要因となっている。全従業員に占める正社員の比率はヒマラヤとアルペンが約37%であるのに対して、ゼビオは約25%と低い。ゼビオでは店舗でのアルバイト従業員の比率が高くなっていることが要因と考えられる。

直近四半期の比率で見ると、ヒマラヤの販管費率は前年同期比で1.8ポイント低下している。これは販促費を中心に経費全般の見直しに取り組んだ効果によるものである。ただ、通期では上期での売上計画未達の影響により相対的に販管費率が上昇、前期比で0.1ポイント増となることが見込まれている。

2011年度以降の営業利益率の推移を見ると、大手2社が2014年度を底にして回復トレンドに入っているのに対して、ヒマラヤは逆に収益性が低下している。ここ2年間は記録的な暖冬(特に、西日本エリア)によりウインター用品が低調だったこと、サッカー等チームスポーツ用品市場の低調が続いていることが主要因となっている。ヒマラヤでは不採算店舗を中心に大量閉店を実施したが、この効果によって2018年8月期以降は営業利益率も回復に転じるものと予想される。

3. 健全性・効率性指標
財務の健全性について見れば、大手2社の自己資本比率が50%以上で推移しているのに対して、ヒマラヤは30%台とやや低水準となっている。これはヒマラヤの有利子負債依存率 (有利子負債÷総資産) が高いことが主因となっている。直近四半期の水準で見ると、ヒマラヤは2017年2月末で25.7%と大手2社 (2016年12月末でアルペン13.2%、ゼビオ0.1%)に対して格差があり、その差が自己資本比率の差となって表れている。ただ、有利子負債の水準そのものは健全な水準であり、自己資本比率も上場企業の中で見れば極端に見劣りするわけではない。

株主資本効率の観点で見れば、2014年度までヒマラヤのROEは大手2社よりも上回る水準で推移していたが、2015年度以降は収益悪化によりもっとも低い水準となっている。しかしながら、今後も財務レバレッジを効かせた経営を継続していくことから、収益が回復すればROEの水準も再び大手2社を上回るものと予想される。

4. 株価指標
主な株価指標を見ると、2016年度予想PERに関してはゼビオが19.9倍と最も低く、アルペンが40倍台、ヒマラヤが60倍台となっており、東証1部上場企業平均の約16倍を上回る水準となっている。一方、PBRについてはゼビオ、ヒマラヤ、アルペンともに0.7倍台といずれも上場企業平均の1.2倍を下回り、解散価値である1倍も下回る水準となっている。ここ数年のスポーツ用品小売市場の競争激化によって収益成長期待が後退していることが、株価に反映されているものと考えられる。

ヒマラヤでは収益悪化を受けて、実店舗の大幅な整理を断行したほか、新業態の開発、EC事業の拡大によって中長期的な安定成長に向けた事業基盤の再構築に取り組んでおり、2018年8月期以降、こうした戦略の効果が収益面で顕在化してくれば、株価についても見直されていくものと弊社では考えている。当面は月次売上状況の動向が注目されるが、既存店売上高で前年同月比を上回ってくれば収益回復期待も高まってくるものと予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



<HN>

情報提供元: FISCO
記事名:「 ヒマラヤ Research Memo(8):足元は大手2社に遅れを取るも、今後の回復力に期待