■要約

カイオム・バイオサイエンス<4583>は、国立研究開発法人理化学研究所(以下、理研)発の創薬基盤技術型バイオベンチャー。独自の創薬基盤技術であるADLib®システムを核とした抗体医薬品の創薬事業及び創薬支援事業等を行っている。

1. 2016年12月期はコスト削減により営業損失が縮小
2016年12月期の業績は売上高で前期比10.0%減の252百万円、営業損失で1,042百万円(前期は1,269百万円の損失)となった。売上高は創薬支援事業において富士レビオ(株)との共同研究開発契約が2016年9月末で終了したこと等を主因として減収となった。期中に人員削減を実施したことや研究開発テーマの絞り込みを行うなど費用削減に取り組んだことで、営業損失額は前期よりも縮小した。

2. 開発パイプラインの導出活動及び自社開発に向けての準備を進める
2017年12月期の業績予想は開示していない。創薬支援事業の売上高については、前期の224百万円から今期は201百万円を見込んでいる。減収要因は、富士レビオとの共同研究開発が終了したことによるものだ。一方、2016年12月に田辺三菱製薬<4508>及びその子会社とADLib®システムを用いたモノクローナル抗体作製等の委受託基本契約を締結した。営業損失額は、人件費や研究開発費の減少が続くため、前期比で若干縮小する見込みとなっている。創薬事業に関しては、引き続き開発パイプラインの導出活動を行っていくほか、自社での初期臨床開発に向けた準備を進めていく方針となっている。2017年2月には抗体開発技術の向上を目的に、鳥取大学発のベンチャーである(株)Trans Chromosomics(以下、TC社)に資本出資をおこなった。シナジーが見込める案件があれば事業提携も積極的に推進していく方針だ。

3. 経営体制を刷新し、事業戦略を再構築
同社は、早期の業績回復に向けて経営体制の刷新を進めている。ここ数年の業績不振に対する経営責任を明確にするため、2017年2月に創業社長であった藤原正明氏が辞任。新たに開発・事業担当取締役の小林茂氏が代表取締役社長に就任した。また、事業計画と実績の乖離と経営に対する信頼性が低下している状況を鑑み、経営の健全化を進めていくため、法務や財務、サイエンスがわかる専門家等数名で構成される経営諮問員会を設置する。今後の事業計画の立案・推進にあたって、公平かつ客観的な立場から提言を行う役割を果たす。同社では現在、新たな経営方針を策定中だが、同諮問委員会での評価・提言を受けたうえで、対外公表する予定だ。発表時期は委員会が発足後に明らかになる見通しで、その内容に注目したい。

■Key Points
・ADLib®システムを使った創薬支援事業と創薬事業を展開
・パイプラインの導出活動を継続すると同時に、自社での初期臨床開発の準備を進める
・経営諮問委員会を新たに設置し、経営の健全化を進めていく

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 カイオム Research Memo(1):経営体制刷新で、新たな中長期戦略を策定中