このため、製薬企業の販売プロモーション活動も今後は生活習慣病治療薬からスペシャリティ医薬品に軸足がシフトしていくものと予想される。生活習慣病治療薬とスペシャリティ医薬品では対象となる患者数も異なるため、販促手法もまったく異なるアプローチが必要となってくる。生活習慣病治療薬では、処方する医師が多く、さらに類似薬も多く存在することから、大量のMR(医薬情報担当者)を動員し、医師に対してFace to Faceによる営業活動を行うことが重要であったが、スペシャリティ医薬品では処方医師は専門医に限られ、薬自体の専門性も高いため、MRについても高い専門知識を持つ人材が求められる。また、新薬発売前から当該医薬品に関連する疾患についての学術情報などを専門医に理解してもらい、発売後にスムーズに処方することができるような準備を整えていくことも重要となる。このため、スペシャリティ医薬品では従来のようなMRによる人海戦術の効果は薄く、専門性の高い疾患情報などの教育コンテンツの提供が重要となってくる。
a) 既存事業 既存事業については大きくデジタル広告市場とWebセミナー市場とがある。デジタル広告市場は同社の主力サービスの1つであるMRPlusのサービス領域となり、現在の国内市場規模は約100億円程度となっている。前述したように、同領域においては今後MRの人員減少が見込まれるなかで、プロモーション活動の生産性向上に寄与する2つのサービスを展開していく予定となっている。
b) 新規事業(スペシャリティ医薬品、上市前) 2016年7月にオープンした臨床医学動画メディア「MEDuLiTe」を活用した新サービスを2016年度から開始している。滑り出しは順調で顧客企業からの評価も高く、今後、制作・編集体制を強化して、更なる受注拡大を目指していく考えだ。教育用コンテンツに関しては、2015年に業務提携したWebMDのコンテンツの2次活用も行っていく。WebMDは世界最大級の医療情報サイト「Medscape」(世界245ヶ国、400万人以上の医師にリーチ)の運営会社で、医師・医療従事者向け教育コンテンツの市場シェアは欧米で約40%、売上規模で年間300億円規模となっている。医師・医療従事者向け教育サービスの市場規模は大学やアカデミアも含めると年間2,000億円規模となっており、一般企業が提供するサービスとしては800億円程度となっている。
c) 新規事業(スペシャリティ医薬品、市販後) スペシャリティ医薬品に関しては、市販後の初期段階において、医師の治療を支援するデータが十分でないことが多い。このため、導入を検討する医師などから臨床データの収集・分析ニーズが高く、製薬企業でもこうした情報を提供していくことが販売促進につながると見ている。特にオンコロジー分野では免疫チェックポイント阻害剤や分子標的治療薬等の登場によって市場が様変わりしており、こうしたニーズが特に強い。