■要約

ドーン<2303>は、地理情報システム(GIS)を活用したシステムの開発・販売を行う企業である。中央省庁や地方自治体、電力会社などでの採用実績が多く、信頼性の要求されるシステムに定評がある。GISエンジンソフトのライセンス販売や受託開発を長年にわたり事業の柱としてきたが、近年はクラウド型サービスで業績を伸ばしている。

1. 注目事業・サービス
同社の近年の成長の原動力となっているのが、クラウド型サービス「NET119緊急通報システム」である。聴覚や発話に障がいのある方のためのシステムであり、スマートフォン・携帯電話のインターネット接続機能を利用して、簡単に素早く119番通報することができる。急病やケガ、地震災害や火災などの緊急時に、自宅からの通報はもちろん、GPS機能を利用しているため外出先からも通報でき、受信側はすぐに居場所を特定できる。操作性の良さやシステムとしての信頼性の高さが評価され、神戸市や川口市などを皮切りに導入が進み、2015年12 月には東京消防庁、2016年10月には大阪市消防局で稼働が開始し、全国の自治体への横展開に弾みがついている。2016年11月現在、当システムが導入されている消防の管轄人口は約3,500万人に上る。当システムはクラウド型サービスであり、顧客である自治体にとっては自前で運営する場合と比較してコストが安く運営の手間もかからないというメリットがある。

2. 2017年5月期第2四半期実績及び通期予想
2017年5月期第2四半期の売上高は283百万円(前年同期比1.8%減)、営業利益7百万円(同66.0%減)と減収減益の決算となった。売上高に関しては、防災関連のクラウド利用料収入は増加したものの、納期が第3四半期以降になる受託開発案件が多かったことから微減。利益減に関しては、成長のための人員投入や支払手数料等により販管費が増加したことが一因となった。

2017年5月期通期の業績予想は、売上高で前期比6.2%増の800百万円、営業利益で同20.4%増の130百万円と期初公表値を据え置く。通年売上予想に対する上半期の進捗率は35.5%であるが、最大のセグメントである受託開発の下期偏重は毎年の傾向であり、足元の納品も順調に進捗している。

3. 次代を担う事業・サービス
同社は2016年10月に京都大学と「AED※活用促進による院外心停止救命システム」に関する共同研究を開始した。この研究は、119番通報を受けた消防本部があらかじめ登録された救命ボランティアのスマホアプリに駆付け要請を通知し、近隣にいるボランティアがAEDを届けるという仕組みを検証するものだ。NET119緊急通報システムなどで培ってきた技術・ノウハウを活用することで、救命のスピードアップが期待され、社会的にも意義は大きい。既に愛知県尾張旭市において実証実験が始まっており、今後は検証結果をまとめ、大都市での実証実験につなげたい考えだ。

※AED:自動体外式除細動器

■Key Points
・快進撃するクラウド型サービス「NET119緊急通報システム」、東京都や大阪市でも稼働中
・2017年5月期第2四半期は減収減益決算。受託開発の売上計上が下半期に集中するため想定どおり。通期業績予想は据え置き
・AED活用促進による救命システムの実証実験が本格化。次代を担うクラウド型サービスとして注力

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 ドーン Research Memo(1):17/5期2Qは減収減益も、受託開発の季節変動が要因であり通期に懸念なし