■成長戦略

ダイコク電機<6430>は、2017年3月期を初年度とする新たな中期経営計画「Next50第一章」を推進している。

前回の中期経営計画については、次世代ホールコンピュータが完成するまでの投資期間と位置付け、次世代ホールコンピュータの開発(3年間で約100億円規模の研究開発費を投入)のほか、ストック型収益モデルへの転換、自社開発パチスロ遊技機の拡大などに取り組み、一定の成果を挙げてきた。

現在の中期経営計画は、市場環境は緩やかに回復に向かうとの想定のもと、市場変化への対応(よりゲーム性を重視したファンの獲得)やパチンコホール経営の変革(データ分析に基づく戦略的な経営判断)に貢献するための事業基盤の強化に取り組む内容となっている。特に、2018年3月期以降の販売開始を目指している次世代ホールコンピュータによるシェア拡大のほか、データ分析力や企画開発力を生かした新たな価値の創出により、成長力及び収益力の向上を実現する方針である。最終年度である2020年3月期の目標として、売上高570億円(4年間の平均成長率4.9%)、営業利益40億円(営業利益率7%)、ROE7%以上を掲げるとともに、投資計画も研究開発費100億円(2018年3月期〜2020年3月期の累計)、設備投資40億円(同)、減価償却費50億円(同)と高い水準を維持する計画であり、更なる成長に向けた先行費用をこなしながら利益率の向上を目指すシナリオとなっている。

弊社でも、パチンコ・パチスロ業界の先行きについて、自主規制の影響などの短期的な要因からの底打ちと緩やかな回復に向かうシナリオを想定しているものの、構造的な外部環境の変化による不透明感も依然大きいものとみている。ただ、次世代ホールコンピュータの開発に100億円規模の投資を行うことができる同社に大きなアドバンテージがあるのは明らかであり、たとえ市場が縮小傾向をたどっても、市場シェアを高めることにより持続的成長を実現することは十分に可能だろう。また、ホール業界も資本力のあるところを中心に勝ち残り、2 極化が更に進む可能性が高く、業界再編の動きは同社にとってプラスに働くものとみている。

また、自社開発パチスロ遊技機についても、既存メーカーと比べて1 機種に十分な開発費用や時間をかけることができることや、データ分析力を活かした魅力あるゲーム性の追求という点において、同社の優位性が発揮される余地は十分にある。ただ、既存市場のシェアを奪うというよりは、同社ならではの独自の価値創造により、アニメファンなどの新しいターゲット層を取り込むことで、市場全体を活性化させるところにこそ成功のカギがあるとみている。

足元の業績は、射幸性の高い機種に対する規制が急速に進んできた影響により厳しい状況が続いているが、2018年3月期についても、更なる自主規制の有無や機種の入れ替えに伴うユーザーの反応(一時的な客離れ等)のほか、それらを踏まえたパチンコホールの投資動向など、不透明感の強い状況と言える。また、次世代ホールコンピュータについても、早ければ2018年3月期中の販売開始を想定してきたが、市場の状況によってはタイミングを遅らせる可能性もあるとみておいたほうがよいだろう。したがって、短期的な業績については、慎重に判断する必要があるが、中長期的な目線で言えば、今の厳しい状況は、よりゲーム性を重視した遊び方への変化やホール業界の再編を促進することによって、同社の優位性をさらに発揮できるステージへと近づくためのプロセスとも言える。今後も、中長期的視点から、圧倒的なポジショニングの確立による同社自身の成長期待に加えて、業界全体の活性化に向けた取り組みに注目していきたい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 ダイコク電 Research Memo(8):次世代ホールコンピュータによるシェア拡大や新たな価値の創出を図る