カイオム・バイオサイエンス<4583>は、国立研究開発法人理化学研究所(以下、理研)発の創薬基盤技術型バイオベンチャーで、独自の創薬基盤技術であるADLib®システムを核とした抗体医薬品の創薬事業及び創薬支援事業等を行っている。

2016年12月期第3四半期累計 (2016年1月−9月)の業績は売上高で前年同期比19.1%減の175百万円、営業損失で827百万円(前年同期は936百万円の損失)となった。創薬支援事業の減収に伴い売上高は減少したものの、研究開発費の絞り込みや人件費の削減を実施したことで営業損失は前年同期から縮小した。

ADLib®システムについては、中外製薬<4519>グループとの研究開発活動を継続しているほか、新たな製薬企業やアカデミア等とも抗体作製プロジェクトを進めており、技術の底上げが着実に進んでいる。一方で、富士レビオ(株)との共同研究開発は2016年9月末をもって終了し、今後は技術ライセンス使用料が得られなくなるが、ADLib®システムを使って開発された今後の新規製品を含めた売上のロイヤルティ収入は継続して売上計上することになる。

自社開発パイプラインの状況について見ると、がん治療用抗体を目指している「LIV-1205」及び「LIV-2008b」については、オプションライセンス契約先であるスイスのADC Therapeutics(以下、ADCT)でADC(抗体薬物複合体)※用途での開発が進められているほか、同社独自でもnaked抗体での導出活動や初期臨床試験に向けた準備を進めている。このうち「LIV-1205」については、米国国立がん研究所と小児がんにおける非臨床開発を進めるための試料提供契約を締結したと発表した(2016年10月)。今後、複数の異なる小児がんを対象とした開発候補抗体としての可能性を評価していく予定となっており、結果が良ければ小児がん領域での開発が進む可能性がある。

※ADC(抗体薬物複合体)は抗体と薬物を結合させ、抗体の抗原特異性を利用して薬物を疾患部位に効率的に行き届かせることを目指した医薬品

2016年12月期の業績見通しは、創薬事業での合理的な業績予想の算定が困難なことから非開示となっているが、創薬支援事業の売上高は227百万円と前期比で若干の減収を見込んでいる。また、営業損失は研究開発費や人件費の減少により、前期よりも縮小することが見込まれる。

■Check Point
・16/12期3Qは人件費等の圧縮により営業損失を縮小
・開発パイプラインはいずれも非臨床試験段階
・創薬基盤技術の強化とパイプラインの拡充に注力

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 カイオム Research Memo(1):「LIV-1205」が米国国立がん研究所と試料提供契約を締結