■日本アジア投資<8518>の17/3期上期の主な活動実績

(1)国内投資の更なる推進

国内投資については、厳選した有望企業8社に対して403百万円(前年同期は7社に対して394百万円)を実行しており、おおむね計画どおりの進捗となった。600万ダウンロードを達成したゲームなどスマートデバイス向けのアプリやゲームを手掛ける企業や、ペット向けの再生医療支援を手掛ける企業などが投資対象となっている。また、上記とは別に、需要拡大が見込まれている都心の複合型高齢者施設※への投資も行っている。

※東京都心初の大規模複合型高齢者施設(定員100名以上の有料老人ホーム、複数の診療所を集めた医療モール、スーパーマーケットを一体化した施設)の開発プロジェクト「勝どき駅前複合ビル計画」への出資。

ただ、最大の課題となっているファンドの設立については、2017年3月期中にベンチャーファンド(50億円)の組成を目指しているものの、上期においては達成することができなかった。有力候補先からのファンド出資が実現しなかったことが理由である。CVC※の台頭や特定分野(ITやバイオなど)への特化型VCファンドなどの設立が続く中で、資金を集めにくくなっていることも背景となっているようだ。同社では、早期実現に向けて、新たな出資候補先の開拓を行っていくとともに、同社の特長や実績を生かした訴求(アジアとの接点を必要としている企業への投資など)をさらに打ち出していく方針のようである。

※コーポレートベンチャーキャピタルの略。事業会社が事業シナジー等を目的として設立するベンチャーキャピタルのこと。

(2) FEとの協業推進

2015年12月に締結した香港の大手投資グループFEとの資本業務提携は、大型ファンドの組成と投資活動を共同で行うことを目的としたものである。2017年3月期は、その第1弾として、インバウンド関連等の国内企業を投資対象としたグローバルファンドの設立(100億円)を計画している。また、中国でも共同ファンド設立を企画(設立目標額は5億人民元)しており、FEが中国国内で保有する政府や大手企業とのネットワークを活用し、中国国内の投資家からファンドを募集する方針である。ただ、こちらも出資候補者との条件面での交渉が難航しており、当初見込みから遅れが生じている。FEとの提携によるポテンシャルの高さに見込み違いはないものの、立ち上がりまでにはやや時間を要する状況とみられる。

(3)再生可能エネルギー投資拡大

既に建設中のプロジェクトを含め、10件に対して794百万円(前年同期は7件に対して628百万円)の投資実行を行った。中止を決定したプロジェクトが1件発生(詳細は決算動向を参照)したものの、2016年9月末時点においては企画中のものを含めて28件(119.0MW)が積み上がっている。その内訳は、売却済が1件(2.2MW)、売電中が7件(22.3MW)、建設中が9件(59.0MW)、企画中が11件(35.5MW)となっているが、そのうち上期において売電を開始したものが1件、建設を開始したものが2件と順調に進捗している。

なお、メガソーラー事業投資については、メガソーラープロジェクトを投資対象とする上場REITが設立されるなど、投資したプロジェクトを継続的に保有するだけでなく途中で売買するための制度基盤が整備されつつあり、計画当初と比べて外部環境は大きく変化している。同社では、外部環境の変化を前向きに捉えて、今後は中長期的な安定収益に加え、投資案件の一部売却による短期的な収益への貢献も選択肢に入れつつ、更なる事業規模の拡大を目指す方針に見直しを行った。2017年3月期については、売電中のうち5件(17.7MW)を下期(第4四半期)に売却する予定である。また、FIT(政府による固定買取の権利)の期限となる2017年3月末までに、新規案件の事業化(企画中の11件など)に着手するとともに、引き続き既存案件の推進を図る方針である。

(4)既存ポートフォリオのバリューアッド(VA)

2017年3月期上期における投資先のIPO(新規上場)実績は、上場企業との株式交換を含め、国内2社(前年同期は3社)となった。なお、下期においては4社程度の上場を見込んでいる(そのうち、11月末時点で2社が上場済)。

また、引き続き投資先に対する顧客候補先紹介や資金調達交渉支援などを実施するとともに、11月には大手事業会社とベンチャー企業のビジネスマッチングの機会を創出するイベント「経営者倶楽部」を開催した(2013年12月より継続実施)。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



<TN>

情報提供元: FISCO
記事名:「 アジア投資 Research Memo(3):国内投資については有望企業8社に対し投資を実行