日本アジア投資<8518>は、日本とアジアにまたがる独立系の総合投資会社として、主力のベンチャー投資のほか、グロース投資やメガソーラー事業投資などの新規投資分野にも注力している。1981年に経済同友会を母体として設立され、豊富な投資経験とブランド、ネットワーク、人材、事業パートナーなどの事業基盤に強みがある。革新的な技術やビジネスモデルを持ち、高い成長力を有するベンチャー企業や中堅・中小企業等への投資や成長支援を通じて、日本とアジアの両地域における産業活性化や経済連携の拡大などに貢献をしてきた。同社グループが管理運用等を行っているファンド運用残高は36,758百万円(17ファンド)、同社の自己資金及び運用ファンドによる投資残高は18,547百万円となっている(2016年9月末現在)。

経済情勢や株式市場等の影響を受けやすい事業特性から業績は不安定な状況で推移してきたが、有利子負債の返済やコスト削減に取り組み、財務体質の改善に一定のめどが立ってきた。また、安定収益の拡大を目的として参入したメガソーラー事業投資も順調に立ち上がっている。2015年12月には香港の大手投資グループFirst Easternグループ(以下FE)との資本業務提携と成長資金調達のための新株予約権の発行も行っており、同社は新たな成長フェーズに入ってきた。

2017年3月期上期の業績(ファンド連結基準)※は、営業収益が前年同期比30.3%減の1,905百万円と減収となったものの、営業利益が同547.3%増の172百万円と大幅な営業増益となった。

※なお、同社は2007年3月期より、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」を適用し、同社グループが管理運用する投資事業組合等を連結範囲に加えるファンド連結基準に移行している。ただ、ファンド連結基準は同社以外の外部出資者の持分が含まれていることやファンドごとの財務方針が反映されるところに注意する必要がある。同社では、投資家からの要望に応じて従来連結基準も同時に開示しているが、弊社でも、より実態を示しているとの判断から従来連結基準による分析を行っている。

2017年3月期上期の業績(従来連結基準)でも、営業収益が前年同期比15.7%減の1,649百万円、営業利益が215百万円(前年同期は146百万円の損失)と減収ながら大幅な営業(及び経常)増益となり、営業(及び経常)損益段階での黒字転換を実現した。メガソーラープロジェクトにかかる一過性の要因にて特別損失を計上したが、それ以外ではおおむね計画どおりの進捗と言える。資産の入れ替えが進んだことによる投資損益の改善や売電収入の拡大が営業増益に寄与した。ただ、最大の課題となっているファンド設立については、上期において実現することができず、下期以降に持ち越しとなった。

2017年3月期の業績予想について同社は、株式市場等の変動要因による影響が極めて大きく、合理的な業績予想が困難である事業特性であることから公表を行っていない。ただ、今期については、ある一定の前提を元に策定した「従来連結基準による見込値」を参考情報として開示している。上期業績がおおむね計画どおりの進捗となったことから、期初見通しを据え置いており、営業収益を前期比26.1%増の5,100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同37.2%減の375百万円と見込んでいる。成功報酬などの不確実性の高い収益を織り込んでいないことに加え特別損失や税金費用の発生を見込んでいるため、親会社株主に帰属する当期純利益は減益の格好となるが、2期連続での黒字を確保する見通しとなっている。

弊社でも、下期において大型の未上場株式の売却のほか、メガソーラープロジェクトの一部売却を予定しており、売却に向けた交渉が順調に進んでいることから同社の業績予想は達成可能とみている。ただ、投資案件の売却が第4四半期に集中していることには注意が必要である。

同社は、今後の事業計画のテーマとして、1)国内投資の更なる推進、2) FE との協業推進、3)再生可能エネルギー投資拡大、4)既存ポートフォリオの価値向上(VA)の4つを掲げており、事業拡大に向けて舵を切る方針である。特に、2020年3月期までにはファンド運用残高を増加させる計画であり、財務基盤の健全性や安定収益を確保しつつ、優良資産の積み上げを図っていく構えである。

弊社では、これまでの課題であった財務体質の改善に一定のめどが立ったことや安定収益の確保を目的として取り組んできたメガソーラー事業も順調に進展していることから、これからの運用資産拡大に向けた動きに注目している。上期においては、ファンド設立に遅れがみられたが、豊富な実績や幅広いネットワークを持つFEとの連携がカギを握るものとみており、今後の動向をフォローしていきたい。

また、メガソーラー事業については、上場インフラファンド市場の開設など、計画当初と比べて外部環境が大きく変化していることを受け、投資案件の一部売却も行っていく方針へと見直したが、投資案件の含み益の拡大や、それを実現する機会が増えていることは同社にとって追い風と言えるだろう。

■Check Point
・日本とアジアにまたがる独立系の総合投資会社
・投資採算改善やメガソーラープロジェクトの収益拡大で営業総利益が大幅増益
・更なる優良資産の積み上げを図り、成長を加速していく

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 アジア投資 Research Memo(1):17/3期上期は大幅な営業増益で着地