■会社概要

(1)会社沿革

SMK<6798>は、電子部品を製造・販売する企業である。取扱製品はコネクタ、スイッチ、リモコン、プラグ、ジャック、電源部品、ターミナル、RFモジュール、コントロールパネル、タッチパネル、通信モジュール、カメラモジュールなど多岐にわたる。その供給先も幅広く、スマートフォンやタブレット、ウェアラブル、セットトップボックスのほか、カーエレクトロニクス市場やヘルスケア市場、環境市場、ホームアプライアンス市場、インダストリー市場にまで及ぶ。アジア・米州・欧州を中心にグローバルに展開し、世界各地で販売・生産・開発拠点を持つ。

創業は1925年にまで遡り、2015年に90周年を迎えた。池田無線電機製作所として創業した同社は、放送無線受信機器等の製造販売から事業をスタートする。その後、「良い部品は良いセットを作る」という創業の精神のもと部品製造にシフト。テレビやラジオ向けの部品から始まり、時代の変遷とともにパソコンやスマートフォンなどにも対象を拡大するなど、様々な電子機器の部品を取り扱ってきた。現在では、カーエレクトロニクス分野や医療・ヘルスケア分野など新市場にも積極的に参入。取り扱う部品点数や対象となる市場の幅広さは、創業から培ってきた高い技術力で完成品メーカーのニーズに柔軟に対応してきた結果と言えるだろう。

ワールドワイドへの展開も積極的だ。1973年には米国駐在員事務所の現地法人化。その後、台湾やベルギーに合弁会社を設立など、次々に海外展開をすすめ、北米、南米、欧州、アジア世界各地に46の拠点を持つに至った。生産拠点だけでなく研究拠点も持っており、現地のニーズに基づいた製品開発体制を整えるなど、現地に溶け込んだ開発・生産・販売体制を確立している。こうした活動の結果、1990年に20%代だった海外売上高比率は1998年には50%を超え、2015年には80%を超えている。海外生産比率も2006年には50%を超え、2015年には70%を超えるまでに成長した。SMKグループで6,000人を超える社員の82%は海外勤務で、まさに世界規模の部品メーカーと言えるだろう。

東京オリンピックを2年後に控えてカラーテレビ需要が加速度的に増加した1962年に東証2部上場を果たし、その後東京・大阪両証券取引所で第2部から第1部に指定替えを果たしている。

(2)事業内容

同社が90年にわたり培ってきたコア技術は、コネクタやスイッチなどの接続技術、リモコンに代表される無線技術、タッチパネルやスイッチなどの入力技術である。1990年より同社のコア技術をベースに3事業部制を組織、2003年には、現在のCS(Connection System)事業部、FC(Functional Components)事業部、TP(TouchPanel)事業部に改編した。

2016年3月期の通期実績をベースに事業部別売上構成を見ると、FC事業部が売上高で46%を占めるなど存在感を示す一方で、営業利益での貢献度は8%と低い。実際に、営業利益率で見るとCS事業部は8.2%、TP事業部は12.7%と10%前後の営業利益率を確保している一方で、FC事業部の営業利益率は1.0%と低い。FC事業部では価格競争の激しいリモコン事業を展開していることが主要な要因だが、同事業部では利益性の高い車載用カメラモジュールやスイッチを取り扱っており、今後の収益性の向上に期待が持てる。

特定完成品メーカーへの依存度が低いのも同社の特徴の1つに挙げられる。一番売上依存度が高い完成品メーカーでも10%未満となっており、完成品メーカーの生産調整の影響を受けにくい事業構造となっている。以前は特定の完成品メーカーへの依存度が20%を超えるなどかなり高く、完成品メーカーの業績に同社の業績が左右されることも少なくなかった。世界規模での営業活動を強化し、特定完成品メーカーの依存度を下げるべく新製品開発や新規顧客開拓を進めてきた結果と言えるだろう。スマートフォン1つとっても、世界的にシェアの高い完成品メーカーから中華圏などの新興企業まで幅広い顧客を確保している。

a) CS事業部
CS事業部で取り扱っているのはコネクタが中心。同社のコネクタ事業の礎とも言える真空管ソケットから同事業を発展させてきた。コネクタは、電子機器などの製品において、製品と外部の機器を接続するインターフェースを提供するものと、製品内部において基板と部品類を接続するインターフェースを提供するものに大別される。前者の代表例は、イヤホン・ヘッドホンのジャックや、USBやHDMI、各種メモリーカードなどに対応したコネクタ類。標準品だけではなく様々な形状のコネクタを提供する。後者の例としては、基板と基板を接続するコネクタや各種2次電池用バッテリーコネクタが挙げられる。電子機器に組み込まれるものが多いため小型の部品が大部分を占めるが、太陽光のソーラーパネルを接続するためのコネクタも製造しており、幅広い用途に対応している。

高品質かつ小型化や薄型化が求められる部品であり、同社の技術力が発揮できる事業分野である。日本ならではの技術力が要求されるため、国内工場で生産されるものも多い。コネクタによっては市場でトップシェアを確保しているものもあるほか、同社が開発したコネクタが事実上のデファクトスタンダードとなるなど、業界での存在感も大きい。

CS事業部の現在の主要マーケットは、インフォメーションテクノロジー市場だ。この市場には、スマートフォン、携帯電話、基地局、PC・タブレット端末、ウェアラブル端末が含まれる。ただし、この市場はパソコンやスマートフォンを中心に縮小傾向となっていることには注意が必要だ。今後成長ができるのは、カーエレクトロニクスやインダストリー市場。車載向けコネクタやヘルスケア用などの成長に期待が持てる。

b) FC事業部
FC事業部では、1970年代のスイッチから1980年代のキーボードを経て、1990年代からはリモコンを主力としている。リモコンは組立完成品としてOEM生産。家電製品のほか、米国で普及しているセットトップボックス向けが主な供給先だ。リモコン事業は、日系企業ではトップシェアを確保している。

そのほかにも同事業部では、車載向けのカメラモジュールやスマートフォン向けのスイッチなどを取り扱っている。特に自動運転への期待の高まりを背景に、車載用カメラモジュール市場は拡大を続けており今後の成長が期待できる。

FC事業部の現在の主要マーケットは、ホームエレクトロニクス市場だ。主力のリモコンが主にセットトップボックス向けや家電製品向けとなっていることが反映されているが、価格競争が激しいため利益貢献度は低く、今後この市場の大幅な拡大は望めそうもない。一方、今後期待が持てるのはカーエレクトロニクス市場だ。自動運転への期待の高まりにより、自動車に搭載されるカメラは増加傾向。同社が得意とする車載用カメラモジュールが今後の同事業部をけん引する可能性は高いと言えるだろう。

c) TP事業部
TP事業部ではタッチパネルを主に扱っている。市場参入は1987年。抵抗膜方式のタッチパネルだけではなく、ATMや駅の券売機で使われる光学方式、スマートフォンに代表される静電容量方式など、様々なタッチパネルを製造している。主力の車載用では抵抗膜方式タッチパネルでトップシェアを誇り、市場での存在感は大きい。

現在、TP事業部では、売上高の9割をカーエレクトロニクス市場が占め、主に抵抗膜方式のタッチパネルを車載機器用として提供している。車載機器用のタッチパネルでは徐々に静電容量方式への移行が進むことが想定されるが、静電容量方式は中国や韓国、台湾企業がひしめき競争が激しい。同社は構成部材の内製化等による価格低減や、曲面対応など高付加価値製品のラインナップ拡充等により、市場での存在感を維持したい考えだ。

カーエレクトロニクス市場以外においても、スマートウォッチ用や事務機器用などのタッチパネルを供給しており、民生・産機市場でもシェア拡大を狙っている。また、ATM・キオスク端末市場に提供している光学方式のタッチパネルは、国内トップシェアを得ており、東京五輪開催に向けて市場拡大による伸張が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 香川 大輔)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 SMK Research Memo(2):3つの事業セグメントを柱にワールドワイドに展開する部品メーカー