東京金融取引所(TFX)が手掛ける取引所為替証拠金取引「くりっく365」は、2022年2月の取引数量が前月比7.2%増の204万5794枚、1日の平均取引数量は10万2290枚と前月比で増加した。月末時点の証拠金預託額は3939.46億円と前月比で0.73億円増加した。取引通貨量では、米ドル、南アフリカランド、メキシコペソ、豪ドル、英ポンドの順となった。一方、取引所株価指数証拠金取引「くりっく株365」は、2月の取引数量が前月比2.4%増の580万6423枚、1日の平均取引数量は33万7525枚と前月比で増加した。月末時点の証拠金預託額は645.59億円となり、前月比で約40.37億円の増加となった。

取引数量トップは米ドル・円で41万8200枚(前月比19.9%減)だった。年明けから急速に高まっていた米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め懸念に伴う株式市場の大幅な調整が1月下旬には一巡。複数のFRB高官から金融引き締めは経済に混乱が及ばないように慎重に進めるとのハト派的な発言が相次いだこともあり、株式市場の落ち着きとともに、為替市場でもリスク回避のドル売り・円買いが一服。ドル・円は2月10日に1ドル=115.99円まで上昇した。しかし、その後、ロシアのウクライナ侵攻など地政学リスクが急速に浮上したことで、リスク選好的なドル買い・円売りの動きには歯止めがかかった。結局、地政学リスクに基づくドル売り・円買いと、日米金利差拡大や日本の貿易収支悪化への思惑を通じたドル買い・円売りの動きが拮抗する形となり、ドル・円はその後1ドル=115円を挟んだもみ合いとなった。

豪ドル・円は24万6968枚(前月比32.5%増)だった。豪ドル・円は月末まで緩やかな上昇トレンドを描いた。月上旬は、上述した株式市場の調整一巡に伴いリスク選好的な豪ドル買い・円売りが先行。その後、ウクライナ情勢を巡る地政学リスクが台頭したが、需給逼迫への思惑から原油先物価格や石炭価格が大きく上昇したことで、資源輸出国通貨としての豪ドルの魅力が向上。対照的に、資源価格の高騰はエネルギー純輸入国である日本の貿易収支悪化に繋がるため、対豪ドルでの円売りに寄与した。

3月のドル・円は堅調もみ合いか。ウクライナ情勢は一段と深刻化。欧米諸国による経済制裁にも関わらず、ロシアのプーチン大統領は強硬姿勢を維持。欧米諸国は経済への影響を懸念し、これまで避けてきたエネルギー産業への経済制裁も辞さない方針へと転じつつある。需給逼迫への思惑が広がり、原油先物価格のほか貴金属、食料品など幅広い品目のインフレが加速。ウクライナ情勢を巡る先行き不透明感はリスク回避的な円買い圧力を生む一方、有事のドル買い圧力も生む。他方、資源価格の高騰は日本の貿易収支の悪化を通じた円売りを連想させる。また、地政学リスクで一時後退していた米国での利上げ観測も再び高まっており、日米金利差拡大を意識したドル買い・円売りも続きやすい。このため、ドル・円は1ドル=115円を挟んだもみ合いながらも底堅く推移すると考えられる。

ユーロ・円は下値模索の展開か。ウクライナ情勢を巡るロシアへの経済制裁強化への懸念が高まっている。欧州諸国はドイツを筆頭にロシアからの原油・液化天然ガス(LNG)の輸入量が多く、同国へのエネルギー依存度が非常に高い。このため、ロシアのエネルギー産業にまで経済制裁が科されるとなると、欧州経済には大きな打撃となる。仮に、LNGなどをロシアの代わりで米国などから輸入するとして量の不足を一部カバーできても、需給逼迫による価格高騰の余波は免れることはできず、経済への悪影響は大きいだろう。米ドルとは異なり、安全通貨とされる円に対してユーロが買われる要因は少なく、ユーロ・円は当面軟調な動きを強いられそうだ。

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情報提供元: FISCO
記事名:「 3月のくりっく365、ドル・円は堅調もみ合い、ユーロ・円は下値模索の展開か