みなさんこんにちは!フィスコマーケットレポーターの高井ひろえです。今回はみなさんが普段耳にしているニュースに関連して金価格がどう動いていく見通しなのかをお話します。金価格の特徴として、株式市場の下落時や有事の際などに、リスク資産から金へと資金が流れ価格は上昇しやすいという見方があります。今回は、そんな「有事」とみられる「2つの戦争」について説明します。これからお話する2つの戦争により、金の価格が押し上げられるシナリオを想定しておく必要があるかもしれません。

■米中貿易戦争と金価格の関係
まず米中貿易戦争です。すでにご存知の方も多いと思いますが、トランプ政権はさる5月13日、中国の対米輸出のうち制裁の対象外となっていた残りの3,805品目、約3,000億ドル相当ついても最大25%の関税を課すことを検討していると明らかにしました。例えば1,000円だったものを買うと関税分が250円追加されるので違いは大きいですよね。これに対し中国も報復関税をかける構えです。国際通貨基金(IMF)の推計によると、米中間の貿易全額に25%の関税をかけると、国内総生産(GDP)への影響は米国で0.3~0.6%、中国で0.5%~1.5%押し下げると予想しています。こういった景気後退不安から「恐怖指数」は5月に20を超える場面もありました。ちなみに恐怖指数は米国の代表的な株価指数S&P500の変動幅の拡大・縮小を数値化したもので、市場の不安感を反映し、20をこえると不安感が高まっている状況だといわれています。恐怖指数が高まれば高まるほど、金などのリスク回避型の資産へ資金が流れる可能性は高まります。

■中東情勢も金価格に影響
もう一つの「戦争」は中東地域におけるものです。トランプ政権はイランにおける深刻な人権侵害や核開発問題を受け、自国はもとより友好国、多国籍企業にイラン産原油全面禁輸という経済制裁の強化を求めています。このようにイラン情勢が緊迫化する中、イランと対立するサウジアラビアは5月13日、 原油の主要な輸送路であるホルムズ海峡に向かっていたタンカーが妨害行為を受けて、船体が損傷したと明らかにしました。ちなみにホルムズ海峡は日本向けタンカーの8割が通過する石油輸送の要所です。さらにサウジアラビアの石油関連施設でドローンによる攻撃があり、イエメンの武装組織「フーシ派」が犯行を認めました。中東地域での対立は激化しつつあり、イランも臨戦態勢をとっています。原油の主な供給国が集まる中東地域での情勢の不安定化はエネルギー価格の高騰を招いて景気不安につながりやすく、資金逃避の動きから金へ資金が流れる可能性も高いと考えられます。金の価格を見る上で、これら2つの「戦争」の動向はしっかりウォッチしていきましょう。

フィスコマーケットレポーター 高井ひろえ



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情報提供元: FISCO
記事名:「 2つの「戦争」と金価格の上昇~もっと知りたい商品先物取引(高井ひろえ)