9日の欧米外為市場では、ドル・円は下げ渋る展開を予想する。本日から開催される閣僚級の米中貿易交渉の決裂が警戒され、引き続き円買いに振れやすい見通し。ただ、行方を見極めたいとのムードが広がるなか、極端な円買いは回避されそうだ。

米中両国は従来の貿易慣行を改める協議を進め合意は間近とみられていたが、中国側がこれまでの是正案を盛り込んだ合意文書の修正を求めた、とされる。米国はそれに反発し、トランプ大統領は中国からの輸入品に対し税率引き上げの制裁に踏み切る方針を示した。本日と明日ワシントンで開かれる閣僚級の両国の協議では、中国側が譲歩するか焦点となるだろう。

決裂した場合、トランプ政権は10日にも対中関税の税率を引き上げる見通し。それに対する中国側の報復措置も見込まれる。市場では貿易戦争再燃の見方から引き続きリスク回避の流れに傾いており、世界的な株安が続く。本日のアジア市場では日経平均株価や上海総合指数の弱含みで円買いが強まった。ただ、午前中に発表された中国の底堅いインフレ指標を受け、円買いの進行は回避されている。

この後の海外市場では様子見ムードが支配しそうだが、米経済指標で21時半発表の生産者物価指数(PPI)が材料になる。国内総生産(GDP)や雇用統計からインフレ鈍化への思惑が広がり、足元ではドル買いを抑制する要因となっている。ただ、前回から伸び拡大予想の明日の消費者物価指数(CPI)も見極めたいとの見方から、PPIへの反応は限定的になり、値動きは小幅にとどまる可能性がある。(吉池 威)

【今日の欧米市場の予定】
・21:30 米・4月生産者物価指数(前月比予想:+0.3%、3月:+0.6%)
・21:30 米・3月貿易収支(予想:-501億ドル、2月:-494億ドル)
・21:30 米・先週分新規失業保険申請件数(予想:22.0万件、前回:23.0万件)
・21:30 カナダ・3月貿易収支(予想:-24億加ドル、2月:-29億加ドル)
・21:30 パウエル米FRB議長開会あいさつ(FRB主催会合)
・22:45 ボスティック米アトランタ連銀総裁が討論会出席(経済見通しと金融政策)
・23:00 米・3月卸売在庫改定値(速報値:前月比0.0%)
・02:00 米財務省30年債入札(190億ドル)
・02:15 エバンス米シカゴ連銀総裁講演
・米中閣僚級通商協議(ワシントン)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 欧米為替見通し:ドル・円は下げ渋りか、米中貿易戦争に警戒も協議の行方を注視