29日の欧米外為市場では、ドル・円は小じっかりの値動きを予想したい。欧州連合(EU)の移民受け入れ問題での合意を受け、ドイツの政局リスクが後退。ユーロ買い・円売りに振れる余地が見込まれ、ドル・円は111円台に押し上げられる可能性がある。

トゥスクEU大統領は日本時間の29日午前、EU首脳会議が移民問題で合意に達したことを明らかにした。地中海から欧州大陸に渡ろうとする難民の受入れにはイタリアの新政権などが否定的な見解を示すなど、議論は紛糾していた。ドイツでは、メルケル与党のキリスト教民主同盟(CDU)とキリスト教社会同盟(CSU)との対立が深刻化し、足元では解散・総選挙への思惑が浮上。しかし、この合意によりドイツの政局流動化への警戒は後退し、本日のアジア市場ではユーロの買い戻しが優勢となり、ユーロ・円の上昇がドル・円を押
し上げた。

海外市場でもEUの移民問題合意を好感して株高が見込まれ、ユーロ・円などクロス円主導の展開となりそうだ。ドル・円は110円台70銭台、110円90銭台にドル売り圧力が観測されているが、ユーロ・円にけん引され111円を上抜ける可能性があろう。

こうしたなか、今晩は21時半発表の米国の5月個人消費支出(PCE)が注目される。インフレ指標であるコアPCE価格指数は前年比+1.9%と、前月の+1.8%を上回り、連邦準備制度理事会(FRB)目標の+2.0%に接近する見通し。ただ、前日の1-3月期国内総生産(GDP)確定値から個人消費の伸びの鈍化が意識されるなか、個人消費支出が弱ければ経済の先行きに警戒が広がろう。(吉池 威)

【今日の欧米市場の予定】
・17:30 英・1-3月期経常収支(予想:-179億ポンド、10-12月期:-184億ポンド)
・17:30 英・1-3月期GDP確定値(前年比予想:+1.2%、改定値:+1.2%)
・17:30 英・5月住宅ローン承認件数(中銀)(予想:6.22万件、4月:6.25万件)
・18:00 ユーロ圏・6月消費者物価指数速報値(前年比予想:+2.0%、5月:+1.9%)
・21:00 南ア・5月貿易収支(予想:+58億ランド、4月:+11億ランド)
・21:30 米・5月個人所得(前月比予想:+0.4%、4月:+0.3%)
・21:30 米・5月個人消費支出(前月比予想:+0.4%、4月:+0.6%)
・21:30 米・5月コアPCE価格指数(前年比予想:+1.9%、4月:+1.8%)
・21:30 カナダ・4月GDP(前月比予想:0.0%、3月:+0.3%)
・22:45 米・6月シカゴ購買部協会景気指数(予想:60.0、5月:62.7)
・23:00 米・6月ミシガン大学消費者信頼感指数確報値(予想:99.0、速報値:99.3)
・EU首脳会議(最終日)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 欧米為替見通し:ドル・円は小じっかりの展開か、EU移民政策合意で独政局懸念後退