防衛」というと有事、つまり戦争を念頭に置いた言葉であるが、近年、「戦争」の定義も大きく変わってしまった。もともと戦争は一般に、「国家もしくはそれに準ずる組織が軍事力・武力を行使し、作戦・戦闘を組織的に遂行する行為および状態である。軍事力・武力を使用する外交の一種」と定義されてきた。が、冷戦終結に伴い世界中で民族対立の問題が顕在化し、紛争があちこちでおこなわれるようになった。そして2001年のいわゆる「9・11」、アメリカ同時多発テロ事件が起き、そこからアメリカは「対テロ戦争」にのめりこんでいった。米国の軍事力をもってしてもテロ組織を壊滅することができず、むしろ泥仕合の様相を見せている。その結果、様々なテロリストが欧米でテロを行うようになってしまっている。

そのために今や、「防衛」とは一般国民にとってはテロからいかに守るかということが真っ先の課題になっているとも言えそうだ。その意味では、防衛銘柄も単に自衛隊や軍隊向けの武器や装備に関わっている企業だけでなく、一般国民が自分自身を守るために使えるモノやサービス、技術、ノウハウを提供する会社も広い意味で防衛銘柄になってきたと言えよう。実際に、テロの未然防止や実際に起きたときの対応策などで、防犯カメラや顔認証や指紋認証などの生体認証システムの需要が今後、さらに高まるとも見られている。


「サイバー軍を強化するアメリカ、サイバー戦が世界の脅威に」

現代の戦争というと対テロ戦争もあるが、デジタル領域での「サイバー戦争」もある。ICTの技術水準やその普及の高まりによって、サイバー戦争も高度化、一般化してきている。

米国のトランプ大統領は8月2日に、米国戦略軍の下に置かれているサイバー軍を統合軍に格上げすると発表。サイバー戦争担当を米軍の正規組織に加えるという意味である。台湾でも今年6月に国防部(国防省)に参謀本部資通電軍式部を発足させた。台湾では陸海空軍に並ぶ第4軍種にこのサイバー軍を位置付けるとしている。ちなみにサイバー戦は、陸、海、空、宇宙に続く第5の戦場という言い方もされている。

今年は北朝鮮の核兵器保有と中距離弾道ミサイルの開発が明らかとなり、日本を含む極東地域の緊張感が一気に高まった。北朝鮮は米国を挑発するかのようにミサイル発射実験を繰り返し、核実験も行った。それに合わせて日本の証券市場でも、防衛関連銘柄、有事関連銘柄と言われる企業の株価が上昇した。それだけでなく、いわゆる防衛銘柄ではない、セキュリティ関連銘柄も、北朝鮮絡みの動きがあると株価が上昇する局面も増えている。

前述のサイバー戦をイメージし、情報セキュリティ会社の株価も北朝鮮の動きに反応するようになっている。情報セキュリティではなく、ネットワークカメラの遠隔操作システム技術のある会社や、災害時等に住民に情報伝達するシステムに関わる製品を持つ会社、さらには警備会社の株価も反応するようになった。このように防衛関連銘柄のカテゴリーは、戦争の定義が曖昧になっている中だからなのか、それと同様に広く受け止められている傾向がみられる。


※本コンテンツは、FISCO 株・企業報2017年冬号 今、この株を買おう~第4次産業革命後の世界~より一部抜粋したものです。





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情報提供元: FISCO
記事名:「 【市場をにぎわす5大テーマ】(5)防衛~セキュリティ対策が日常風景になる世界