■ドル反転、米経済指標改善でリスク回避のドル売り縮小

先週のドル・円は反転。北朝鮮は29日早朝、弾道ミサイル1発を発射したことを受けてリスク回避の円買いが拡大し、ドル・円は一時108円27銭まで下落した。ただ、米国国防総省は「北朝鮮のミサイル、米国、グアムの脅威にはならない」と指摘したため、米朝間の緊張状態はやや緩和された。また、29日発表された8月米消費者信頼感指数は市場予想を上回ったことから、ドルを買い戻す動きが広がり、ドル・円は109円90銭まで戻した。

ハリケーン「ハービー」によって被った損害は短期的に製造業セクターを圧迫するとの見方が広がったことや、インフレ鈍化の思惑が残されており、ドルは伸び悩む場面があった。しかしながら、30日発表の8月の米ADP雇用統計と4-6月期米国内総生産(GDP)改定値が市場予想を上回ったことから、年内追加利上げ観測が再浮上し、ドルは110円台を回復した。

1日発表の米8月雇用統計は市場予想を下回る内容だったことから、ドルは一時109円台後半まで下落したが、その後発表された8月米ISM製造業景況指数は2011年4月以来の高水準となったことを受けてドルは110円台に反発し、110円25銭でこの週の取引を終えた。取引レンジ:108円27銭-110円67銭。

■ドル・円はもみあいか、トランプ政策と米金融政策を見極める展開

今週のドル・円はもみあいか。トランプ政策や米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策(金利正常化方針)に先行き不透明感が広がっている。このため、市場関係者の間からは「政治情勢や経済指標などを入念に点検し、今後の金融政策を見極めたい」との声が聞かれている。

トランプ米大統領はメキシコ国境付近の壁建設に関し、費用を政府予算に計上する考えだが、米ワシントンポスト紙は1日、複数の政府当局者が議会に対し、「政府機関の閉鎖を回避するためのつなぎ法案に壁建設予算を盛り込む必要はない」と通知していたと報じた。壁建設予算についてトランプ政権内で異なる対応がみられたことは懸念材料となる。米財務長官は債務上限の月内引き上げを明言しているが、壁建設を巡ってトランプ政策の目玉である税制改正の論議が停滞し、有意義な進展が期待できなくなった場合、米国経済への悪影響を警戒して株売り・ドル売りが優勢となる可能性がある。

一方、FRBが今月19-20日に開催する連邦公開市場委員会(FOMC)で、バランスシートの縮小開始は織り込まれつつあるものの、12月追加利上げについては見方が分かれている。8月ISM製造業景況指数は大幅に改善したが、同月の雇用統計は市場予想を下回った。また、ハリケーン「ハービー」によって被った損害は短期的に製造業セクターを圧迫するとの見方が多い。今週発表される米経済指標が改善すれば、年内追加利上げ観測が広がり、ドル買いが強まる可能性があるが、インフレ鈍化を示唆するデータが追加された場合、ドルは伸び悩む可能性がある。

【米国議会審議再開】
夏季休会となっていた米国議会は5日以降に審議を再開する見通し。トランプ大統領が主張する壁建設の費用計上をめぐり債務上限の引き上げ問題が再燃している。税制改革など重要政策の審議が進展しなければ失望感から株安・ドル安の流れが強まろう。

【米・8月ISM非製造業景況指数】(6日発表予定)
6日発表の8月ISM非製造業景況指数は7月実績の53.9を上回る55.1と予想されている。8月のISM製造業景況指数は予想を上回る強い内容だったが、非製造業の景況感改善は年内追加利上げへの期待を高める一因となり、ドル買いが強まりそうだ。

予想レンジ:109円00銭−112円00銭




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情報提供元: FISCO
記事名:「 為替週間見通し:ドル・円はもみあいか、トランプ政策と米金融政策を見極める展開