4.民主化 vs 貿易依存:各国に対する一帯一路の交渉力。 一帯一路構想がアフリカに与える影響:債務、民主主義、依存。アフリカ地域では、中国が提唱する一帯一路構想への依存が徐々に深まっている。これは、国内の民主的な制御と均衡、もしくは貿易依存とは何の関係もない。それどころか、中国融資の債務不履行リスクが日に日に高まっている。これまでは、中国の融資先は東アフリカや南部アフリカがほとんどであったが、2021年から2022年にかけて、セネガル、ベニン、コートジボワールなど西アフリカにシフトし始めた。西アフリカ諸国の中国からの借入がそれまで少なかったことが背景にある。
コロナ後には、中国の景気低迷、政策の変更、アフリカの債務に対する懸念などの問題が生じた。中国の対アフリカ融資の金額と種類から、中国の一帯一路構想のインフラ建設のうち、5億米ドルを超える鉄道や高速道路など大規模融資プロジェクトは今後少なくなり、社会福祉や環境をより重視するようになると予測できる。中国の「小さくても美しい(small but beautiful)」一帯一路構想のインフラプロジェクトは今後、その戦略的重点と質が特徴となるであろう。
5.「小さくても美しい(Small but Beautiful)」一帯一路構想の政治的意味 新たな局面を迎える一帯一路構想:「小さいけれど美しい(Small but Beautiful)」プロジェクトの時代
中国が意欲を見せる一帯一路構想が2013年に打ち出されてから10年が経過した。しかし、中国国内の経済的課題やコロナ禍による壊滅的影響、相手国における債務の持続可能性に対する懸念の高まりなど、世界情勢は著しい変化を遂げている。こうした動向を受け、一帯一路構想はこれまでとは異なる、精度と質の重視を特徴とする新たな局面を迎えている。微妙に変化した構想は、その初期段階に見られた巨額投資とは全く対照的な「小さくても美しい(small but beautiful)」プロジェクトという新語を生み出した。
複雑な外交工作を特徴とする時代にあって、台湾は民主主義的価値観を守る、志を同じくした国との関係強化が推奨される。いわゆる「民主主義的価値を重視する豊かな国(Prosperous and focused on Democratic Value Nation)」プロジェクト案は戦略的にその対象を、台湾との実質的な外交・経済関係の構築を強く望む国に絞るべきである。効果的なタイミングで導入すれば、この取り組みはかなりの成果をもたらし、台湾とその外交パートナーの双方の利益となる可能性がある。