以下は、2022年12月12日にYouTubeチャンネル「FISCO TV」で配信された「NYダウ先物の活用メリットと投資戦略」である。世界の株式市場は10月以降、緩やかながら回復基調を辿っており、こうした中、今回は個人投資家からの注目度も高まっている大阪取引所のNYダウ先物について、フィスコアナリスト仲村幸浩が、その活用メリットを紹介、3回に分けて配信する。


いま世界で活躍する多くの企業はいまサプライチェーン、供給網の立て直しを迫られています。企業は、これまでのように安くつくることだけを考えるのでなく、緊急時でも生産ができるように生産地域を分散するなど、コスト以外のことも考えて生産体制をつくることが求められるようになっています。エネルギーや食糧も安いからという理由だけで、一つの国から輸入するのは危険と考えられるようになり、今後は安定性も重視して複数の国から輸入することが求められるようになってきています。

言い換えると、これまでのグローバリゼーションの巻き戻しのような動きがいま世界で起こっていて、これは構造的なインフレ圧力になり得るということです。もちろん、テクノロジーの発展による生産性向上などは続きますし、グローバリゼーションの流れが完全に止まったわけではないので、やや誇張した言い方ではあるかもしれませんが、少なくとも、以前のような低い水準にまで物価が下がりにくくなったということは確かだと思います。
まとめると、インフレが構造的なものに変わりつつあって、これに伴い、今後は長期金利が高い水準で高止まりする可能性があるということです。もしくは、低下したとしても、以前のような水準にまでは低下しにくくなっていると考えられます。

これがどう株式投資に影響してくるのかといいますと、これは大きな変化をもたらします。金利が0%に近い水準、つまり、ほとんどコストゼロで資金が借りられる以前の世界であれば、生産性の低い企業であっても資金を借りることができて生き残ることができました。投資家も利回りの低い債券などには投資せずに、少しでも高いリターンを狙って赤字の新興企業にも積極的に投資をしてきました。

しかし、金利が上がり借り入れコストが上昇すれば、まず企業の淘汰が進むでしょう。また、債券利回りが2~3%程度もあるのであれば、株式でなく債券に投資をしようと考える投資家も増えるでしょう。つまり、株式市場に流通するマネーの量が減ると考えられます。実際のところ、その他にも、現在、FRBは量的引き締め、いわゆるQTを行っていて、金融緩和の巻き戻しを実施中であり、市場からマネーを吸い上げています。

つまり、赤字企業であろうと何であろうと株価が上がるような時代は終わり、今後は株式投資にあたっては企業の選別が重要になってきたということです。一時は株価指数に連動するインデックス型の投資信託にさえ投資をしていれば十分で、企業調査などのコストをかけて投資対象を選別するアクティブ型の投資信託はもう必要ないなどと言われていました。今後もインデックス投資の有効性は、なくなりはしませんが、今後はむしろ投資家の選別力がものを言う時代になると見られ、アクティブな投資スタイルが求められると考えます。

こうなってくると、今回ご紹介したNYダウ先物の活用方法も色々と考えることができて、例えば、しっかりとリサーチとした上でこれだと思う企業に投資をしつつ、NYダウ先物を個別株投資のヘッジ役として売りから入るといった戦略も非常に有効になってくるかと思います。

それでは最後に、個別株投資の話が出てきたところで、NYダウ構成銘柄の中で今後、注目できる企業についていくつかご紹介したいと思います。

正直、NYダウに採用されている企業はすべて魅力的なのですが、今回はセクターのバランスも考えながら、3つご紹介いたします。まず一つ目は情報技術セクターから、マイクロソフトです。直近の2022年7−9月期決算では有力な大型企業でさえも、冴えない決算で株価が下落する銘柄が続出しました。しかし、マイクロソフトはその中でもかなり善戦したと考えています。

7−9月期の売上高は前年同期比11%増収となった一方、一株当たり利益(EPS)は13%減と利益面ではやや苦しい結果となりました。主に、景気減速に伴うパソコンなど民生向け市場の落ち込みによって、MPC部門でのWindowsの販売がかなり落ち込んだのが響きました。ただ、ドル高による影響が増収率にして6%近くも全体を押し下げた中では総じて底堅い決算だったと思います。具体的には、市場が注目するクラウドプラットフォームの「Azure」の増収率は為替の下押し圧力がある中でも35%と高い伸びだったほか、営業支援ツールの「Dynamics365」や「Office365」などの主力サービスの増収率も2ケタ台を維持した点は評価できるかと思います。

景気が減速して、企業の財布の紐が堅くなる中では、企業としては上司からの決裁の承認といったプロセスを省きたいという理由もあって、なるべく一つの企業からのサービスだけで課題をまとめて解消したいと考えると思われます。こうした中では、豊富なサービスを扱っていて、包括的にプロダクトを提供できる大企業の方が有利と言えます。アメリカ経済は、FRBのこれまでの積極的な金融引き締め効果により、来年2023年は大きく景気減速すると予想されていますから、今後も大企業の方が相対的に強みを発揮しやすいかと思われます。

二つ目は、建設機械・鉱山機械大手のキャタピラーです。7−9月期は売上高が前年同期比21%増、EPSは同48%増と好決算となりました。セグメント別では、建設機械、鉱山機械、エネルギー&輸送の3事業すべてで大幅な増収増益となりました。中でもエネルギー市況の高止まりを背景に、鉱山機械のセグメントがとりわけ好調な結果となりました。原材料費の高騰やドル高の影響で苦しむ企業が多い中、値上げや販売量の増加でカバーし、営業利益率を改善させてきた点は評価できるかと思います。エネルギー市況の高止まりで鉱山開発需要は今後も底堅く推移すると見込まれるうえ、北米ディーラーの在庫は依然として低い水準のままとされていることから、販売拡大余地は十分に残されているかと思います。会社側は今後もコストの増加に対しては値上げで相殺する意向を示していますが、現在の良好な需給環境を踏まえれば、値上げはしっかり浸透していくと考えられます。

三つ目はユナイテッドヘルスグループです。7−9月期の売上高は前年同期比12%増、EPSは同28%増と好調な決算でした。傘下のユナイテッドヘルスケアが11%増収・41%営業増益、Optumは17%増収・19%営業増益と両部門ともに2ケタ台の増収増益でした。高齢化社会の進展を背景に、医療給付サービスの需要は拡大傾向にあり、高いコストパフォーマンスを強みに業界で圧倒的な地位を誇っている同社のポジションを踏まえると、今後も市場の拡大に合わせて収益を安定的に拡大させることができると考えられます。また、薬剤給付管理(PBM)サービスや医療従事者向けのデータ分析サービスなどを提供するOptumはとりわけ高い成長が続いています。今年10月にはヘルスケア関連のテクノロジー企業の買収を完了していて、今後はシナジー効果によりさらに成長力を高めていく見込みで、長期的な成長が期待できそうです。

いかがでしたでしょうか。本日はNYダウ先物の活用メリットから指数を構成する企業の業績動向までをご紹介しました。皆さんも、ぜひ個別株投資とNYダウ先物をミックスさせた合わせ技を実践してみてはいかがでしょうか。新しい投資手法としてNYダウ先物のメリットが伝わっていれば幸いです。本日は動画をご視聴いただき、どうもありがとうございました。


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情報提供元: FISCO
記事名:「 【NYダウ先物の活用メリットと投資戦略vol.3】NYダウを構成する注目銘柄