◆歳をとったせいか、僕も角がとれて丸くなった気がする。その証拠に最近では「炎上」することがなくなった。以前はSNSなどの書き込みに怒って言い返すと、よく「炎上」したりしたものだった。当時、小学生だった娘に「パパ、もう炎上しないで」と言われたこともあった(2019/7/1「炎上商法」https://media.monex.co.jp/articles/-/11860)。ただ今後は、そもそも炎上のきっかけとなる悪意ある投稿や書き込みも減るのではないか。

◆SNSの誹謗中傷対策を強化するため、公然と人を侮辱した行為に適用される侮辱罪が強化される。懲役刑を導入し、法定刑の上限を引き上げる。公訴時効も1年から3年に延びる。専門家はこれが大きいという。発信者情報を突き止めて起訴まで持ち込むのが1年では難しいからだ。3年あればネットの匿名性の陰に隠れ続けることもできなくなるだろう。

◆一方で、「なにが侮辱罪にあたるのか」の判断基準にあいまいさが残ることへの懸念もある。取り締まりを恐れて発言が過度に委縮してしまうかもしれない。ネットならではの、自由な談論風発の気概を削いでしまうのはもったいない。誰もが、誰に対しても自由に批判できる社会が望ましい。当たり前のことだが、批判する者はモラルと秩序をもって為すべきであり、批判と誹謗中傷をはき違えるなどあってはならないことである。

◆僕も、真っ当な批判なら甘んじて受け入れる。それがまた自分の成長の糧になるからだ。そうはいいながら、最近、自分が丸くなったのはどこかに批判を恐れているからではないかとも思う。「丸くなるな、星になれ」というビールのCMがあった。自分にも当てはまる。丸くなってはいけない。尖ったところを持ち続けなくてはならない。尖ってなければ、刺さらないからだ。


マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆
(出所:3/22配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【新潮流2.0】:侮辱罪(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)