◆コン・ゲームとは詐欺師が相手を信用させて、お金をだまし取る物語のこと。映画では「スティング」、小説ではジェフリー・アーチャー「百万ドルをとり返せ!」などをはじめ名作がいくつもある。最近のテレビドラマでは「コンフィデンスマンJP」がヒットした。奇想天外な仕掛けに、だましだまされ、どんでん返しのラストへ。コン・ゲームの魅力は、まさにその痛快さにある。

◆こちらは、とても痛快とは言えない詐欺事件だ。新型コロナウイルス対策の「家賃支援給付金」をだまし取ったとして、経済産業省のキャリア官僚二人が逮捕された。コロナで苦しんでいる人を助けるためのお金を、その政策を担う官僚がだまし取るという、きわめて悪質な事件である。コン・ゲームの「コン」はコンフィデンス(信用)の意味だ。この事件が官僚に対する国民の信用を一段と失墜させたのは間違いない。

◆もちろん、糾弾されるべきはキャリア官僚二人の悪事だが、これを機会に制度の功罪という点にも注目が当たるかもしれない。コロナによる企業の経営悪化を防ぐための給付金制度だが不正受給も後を絶たず相当な数にのぼっている。それらの不正は言語道断だが、「意図せざる」罪つくりな面もある。本来なら退場を迫られるようなゾンビ企業も給付金のおかげで延命措置が図られてしまうという点である。産業の新陳代謝が鈍り、日本経済の活力を削ぐことになりかねない。

◆しかし、実際にコロナで苦しんでいる人に給付金は必要かつ有効な対策だ。望ましいのは本当に必要なところにだけ給付金を配るということだが、それをどうやって見極めるのか。同じことだが、「本来なら退場を迫られるようなゾンビ企業」と口でいうのは簡単だが、それを誰が、どうやって判断するのか。 本来は市場での自然淘汰や金融機関の「目利き力」に委ねられるものだが、コロナの非常時には機能しない。名案はないか。コン・ゲームの主人公たちは詐欺師だが天才的なアイデアの持ち主だ。彼らに妙案を尋ねてみたいものである。


マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆
(出所:6/28配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【新潮流2.0】:コン・ゲーム(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)