2月1日に日本経済研究センターが発表した「感染対策の経済影響」では、医療の逼迫度合いを大きく緩和できるステージII水準まで感染を収束させてから緊急事態宣言を解除(ステージIII解除に比べ約2週間延長、解除は3月7日)すると、秋まで民間消費は回復軌道を維持することができ、経済的にも恩恵をもたらすと言及されている。

本レポートで人流と気温から実行再生産数(感染拡大ペース)を推計したところ、「人流が1%増えると実効再生産数が1.3%増加する」という関係が見られた。実効再生産数を1.5から1.0まで(33%)減少させるためには、人流を26%抑制する必要があると解釈している。

また、2週間延長シナリオと4週間延長シナリオを比較し、緊急事態宣言後の人流、感染者数をベースに経済(主に消費)への影響を分析している。シナリオ1は、(1)「緊急事態」を2月下旬まで継続、(2)同時期の感染はステージIII(東京では週次平均500人/日程度)と想定、(3)人流を70程度に抑えるよう要請(感染拡大前の20年1月上旬~2月上旬の水準が100)、シナリオ2は、(1)「緊急事態」を3月上旬まで継続、(2)強制力を伴う休業要請などで人流を60まで抑制、(3)3月上旬にはステージII(東京であれば、週次平均100人/日)に落ち着く、と想定している。

人流が70まで低下すると、実効再生産数も0.73となり、2月20日頃にはステージIIIに達する見通しである。シナリオ1では、緊急事態宣言解除後は、昨年5月下旬の緊急事態宣言後のように飲食店やイベントの規制は段階的に緩和されるとし、今回の解除後の人流も昨年同様の動きを想定している。シナリオ2では、休業要請などもう一段の対策が打ち出される一方、特措法改正で要請の効果が向上し、人流は60まで低下する。3月7日に解除された後の人流は基本的にシナリオ1と同じであるが、東京都を含むGOTO事業の再開はないとしている。

宣言解除後、人流が強くなると新規感染者は増加に転じ、実効再生産数は1を超過する見込みである。シナリオ1で宣言を解除した場合、7月に再び緊急事態宣言となる可能性が高い。ステージIIの水準まで感染者を抑制するシナリオ2では、感染者の絶対数が少なく、夏の緊急事態宣言は回避できると考えられ、政府が開催に強い意欲を持つ東京五輪につい ても、開催できる可能性もあるだろうとしている。

一方で、シナリオ2でも実行再生産数が1を超えている限り、時間が経過すれば感染者は増え続け、晩秋から冬にかけて急増し、再び緊急事態宣言に追い込まれる可能性がある。人流コントロールによる感染抑制は、あくまで時間稼ぎに過ぎない。ただし、「2週間の“我慢”で4カ月の時間的猶予」が得られることは、費用対効果としては悪くないのではないかと結論づけている。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 緊急事態宣言、2週間の“我慢”でえられる効果とは?【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】