米国労働省はワシントンで今週4日に最新11月の雇用統計を発表する。市場エコノミスト平均予想では失業率が6.8%と10月からさらに低下する見込み。4月に大恐慌以来で最高水準に上昇後、低下基調にある。非農業部門雇用者数は+47.8万人と、6月に大恐慌以来最大の伸びを記録したのち引き続きペースが鈍化すると見られている。

いくつかの先行指標でも雇用の鈍化が示唆された。米労働省が発表する雇用統計と最も相関性が高いとされる民間部門の雇用者数を示す。

1)ADP雇用統計の11月分は+30.7万人で、伸びは10月から拡大予想に反して鈍化し7月来で最小にとどまった。

2)週次失業保険申請者数は全米各地で新型ウイルスの再拡大が報告された11月初旬から再び増加に転じ、予想外に2週連続で増加している。規制が再び強化される傾向にあり、企業の業績が再び悪化。第2、第3の雇用削減を強いられる可能性が今後も警戒される。

3)全米の製造業活動を示すISM製造業指数の雇用は48.4と、10月53.2から再び活動の縮小を示す50割れ、8月来の低水準に落ち込んだ。

4)米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)でも、ほとんど全地区が雇用の増加を報告も、ペースの鈍化を指摘。回復は完了しておらず、企業は雇用の水準が冬季に低下することを恐れていると報告されている。

FRB高官は、今後数カ月の経済が停滞する可能性を警告したものの、2021年の後半の見通しはワクチンなどが広範に行き渡るため明るく、特に追加緩和を明確化していない。カプラン米ダラス連銀総裁は国債購入のペース加速は望まないと言及。国債購入に関するガイダンスの修正の必要性を主張した。パウエル議長は上下院証言で、パンデミックからの回復が想定以上に速いが、依然1000万人が失業中で、当面大規模な金融緩和や財政支援が必要だと訴えた。ドルは当面安値圏でのもみ合いが予想される。


■11月雇用統計の先行指標

・ISM製造業指数:雇用:48.4(10月53.2)

・ADP雇用統計:+30.7万人(予想:+44.0万人、10月:+40.4万人←+36.5万人)

・NY連銀製造業景況指数:
雇用(現状):+9.4(10月+7.2、6カ月平均+3.1)
週平均就業時間:+4.8(16.1、6カ月平均+1.0)

6か月先
雇用:22.2(23.2、6カ月平均19.7)
週平均就業時間:+9.3(6.6、6カ月平均+5.1)

・フィラデルフィア連銀製造業景況指数
雇用(現状):27.2(12.7、6カ月平均13.4)
週平均就業時間:25.7(25.3、13.5)

6か月先
雇用:36.2(45.7、6か月平均36.0)
週平均就業時間:20.9(19.8、6か月平均23.9)


・消費者信頼感指数(%)

現況
雇用
十分:26.7(26.7、44.0)
不十分:53.8(53.7、43.6)
困難:19.5(19.6、12.4)

6カ月後の予想
雇用
増加:25.9(32.0、16.5)
減少:20.5(19.8、13.4)
不変:53.6(48.2、70.1)

所得
増加:17.6(17.5、22.9)
減少:13.3(14.2、6.2)
不変:69.1(68.3、70.9)


・失業保険申請件数

件数 前週比 4週平均 継続受給者数

11/21/20|   778,000|   30,000|  748,500|   n/a
11/14/20|   748,000|   37,000|  743,500|   6,071,000
11/07/20|   711,000|   -46,000|  755,750|   6,370,000
10/31/20|   757,000|   -1,000|  788,500|   6,798,000
10/24/20|   758,000|   -39,000|  791,000|   7,222,000
10/17/20|   797,000|   -45,000|  813,750|   7,823,000
10/10/20|   842,000|   75,000|  832,750|   8,472,000
10/03/20|   767,000|   -82,000|  838,750|   9,398,000

■市場エコノミスト予想
失業率:6.8(10月6.9%)
非農業部門雇用者数:前月比+47.8万人(+63.8万人)
民間部門雇用者数:前月比+55万人(+90.6万人)
平均時給:予想:前月比+0.1%、前年比+4.2%(+0.1%、+4.5%)





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情報提供元: FISCO
記事名:「 NYの視点:米11月雇用統計:労働市場の鈍化示唆を警戒