週末、米自動車最大手のGMが銀行を設立すると報じられました。米国の自動車ローンは、直近7-9月期の新規貸出額が17兆円と、データのある2004年以降で過去最高を記録するなど、コロナ禍にあっても絶好調です。これを調達面で支えるため、預金を預かることができる銀行の設立を考えるようです。

また、米国の新興ネット銀行のチャイムは、来年には上場すると見られており、9月に約500億円の資金調達を行いました。その時価総額は1.5兆円と、この1年弱で評価は2倍以上に上昇しています。

このところ、米国で銀行の価値が見直されている印象です。S&P500の銀行セクターの上昇率は平均22%でS&P500全体の上昇率の2倍となっています。もちろんワクチン期待で、景気敏感の銀行株の買い戻しという短期的な要因もありますが、加えて、中長期的な観点もありそうです。

企業や個人の債務は急増しています。コロナの影響もありますが、景気が回復すれば別の意味で貸出は伸びるでしょう。しかし、貸出金利は低位に留まっており、預金という安い調達手段を持つ銀行がノンバンクよりも有利になります。かつ、その預金が米国では1年で280兆円も増えていて、運用余力が増しています。

では、日本の銀行セクターは、というと株価はぱっとしません。一時期の地銀の再編期待の反動もあり、過去1ヶ月の上昇率は平均4%、それがない大手行でも7%程度です。

日本では、預金を集めても殆ど収益が上がらず、手数料も取りにくいという構造的な問題もあります。しかし、新型コロナで、銀行貸出は前年比6%台の急増で、タイムリーな貸出の重要性が改めて見直されました。最近では、ATM手数料の一部引き上げや、紙の通帳発行を有料にするなど、手数料引き上げの動きも見られます。金利も下げ止まりつつある現在、今後は、日本でも、銀行の価値が見直される余地があるのではと思います。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:11/30配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)



<HH>

情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【アナリスト夜話】銀行業界にミニブーム?(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)