◆先週、日経平均は29年半ぶりに2万6000円台をつけた。これを受けて日経新聞のコラム「春秋」は91年当時の世相を振り返っている。証券会社の損失補填問題、湾岸戦争に自衛隊派遣、横綱千代の富士の引退。ここまではいいが、「街にはKANの『愛は勝つ』が流れて、映画は『ホーム・アローン』がヒット」というのは僕の感覚とズレている。僕なら「月9ドラマ『東京ラブストーリー』がブームとなり、小田和正が歌う主題歌『ラブストーリーは突然に』も大ヒットした」と書く。

◆『東京ラブストーリー』は平均視聴率が20%を超え、月曜の夜は早く帰ってドラマを見ようと街から若い女性の姿が消えた。それほどの大ヒットを記録した「東ラブ」だが、織田裕二と鈴木保奈美主演の新作ドラマの番宣のため、2年前に再放送された時はまったく視聴率があがらなかった。無理もないだろう。時代が違い過ぎるのだ。

◆このドラマは主人公ふたりのすれ違いにヤキモキさせられるのが醍醐味だった。たとえばメモがなくなって連絡が伝わらずに大雨の中、待ちぼうけする…なんて現代では考えられないシチュエーションがある。今の若者からみれば、「LINEすればよくね?」で片づけられてしまいそうだが、当時は携帯電話なんてものはなかった(あったが巨大で高価な代物だった)のだ。

◆この30年、確実に時代は進歩している。進歩していないのは株価だ。2万6000円といってもまだ最高値の3分の2を戻したに過ぎない。2万6000円は91年5月以来だが91年5月と言えば、お立ち台に扇子で知られるディスコ「ジュリアナ東京」がオープンした時である。「ジュリアナ東京」はバブルの象徴のように扱われることが多いが、実はジュリアナがオープンした時は既にバブルは弾けた後だった。

◆ここから言えることは何か。バブルは弾けた後でないとわからないというが、弾けた後も相当時間が経ってからでないとわからない、ということであろう。株価のピークは89年末の3万8915円。ジュリアナのオープンはその1年半後。株価がすでに3分の1を吹き飛ばした時点で、ひとびとはまだ狂騒の中で踊っていたのだから。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆
(出所:11/24配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【新潮流2.0】:宴の後に気づく時(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)