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英国海軍では、2014年にインヴィンシブル級空母が退役した後、7年ぶりの空母の本格運用となる。英海軍艦隊司令官ジェリー・キッド中将は、「決定事項ではないが、極東への空母打撃群の常駐配備の計画があり、配備先として英国の極東における軍事同盟5カ国防衛取極国(イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シンガポール)の中のどこかである可能性が高い」と言及している。果たして、英海軍最新鋭空母打撃群はどれほどの戦闘能力を有するのか検証してみたい。
空母打撃群の強さは、空母自体の性能、空母艦載機の各種能力、空母打撃群を編成する各部隊の能力の総和で規定される。まず初めに空母自体の性能に着目したい。英国海軍サイトや様々な報道を基に分析すると、空母クイーンエリザベスは性能要目で以下の通りとなる。2017年に就役したばかりの最新鋭艦であり、満載排水量65,000トン、全長280m、最大幅73m、機関で統合全電気推進、ガスタービン発電機2基、ディーゼル発電機4基を搭載している。最大速力が26ノット、航続距離10,000海里、乗員が約1,600名、艦載機にF-35B 24機(12機×2個飛行隊)、哨戒型マーリンHM.2 9機、早期警戒型マーリンASaC.5 3機が搭載される見積もりである。いずれも最新鋭の兵器を多数装備している。
続いて、各種報道から推察される空母打撃群を編成する艦隊等の状況を見てみよう。まず、防空艦としてデアリング級45型駆逐艦(7,350トン)が2隻配備される。この艦艇は、フェーズドアレイ・レーダーを装備し最大探知距離250km、500~1,000の目標を同時に追尾でき、12の目標と同時に交戦可能である。シーバイパー艦隊空ミサイル・システム及びアスター艦隊空ミサイルなど多数の強力な防空兵器を備えている。次に、対水上艦艇任務、対潜水艦任務のためリアンダー級23型フリゲート(4,300トン)2隻が編成される。この艦艇はシーウルフ、ハープーンミサイル、スティングレイ短魚雷、魚雷デコイ装置など、充実した装備を備えている。さらに、アスチュート級原子力潜水艦(7,800トン)1隻が随伴し、対潜水艦任務、対水上艦任務、対地上作戦支援任務のいずれにも複合的に対応できる能力を有している。また、大型艦隊補給艦(37,000トン)2隻が燃料及び弾薬の補給に任ずる計画であり、後方支援システムも万全な態勢となる見込みである。
現在、世界には、強襲揚陸艦、ヘリ空母を含め、航空母艦を運用している国が14カ国ある。米国が圧倒的に強力な戦力であり、英国とフランスがこれに続いているとみられる。空母打撃群として艦載機の機数、能力、随伴艦の戦闘力、装備を比較すると、英国のクイーンエリザベス打撃群とフランスの原子力空母シャルルドゴール打撃群が同等の強力な戦力となっている。両空母打撃群は、ともに複数種類の艦載機を40機程度、複数の防空艦、対潜・対水上艦、潜水艦、補給艦により空母打撃群が編成されることから、自己完結的な作戦遂行能力を有し、米国以外の空母保有国に比較し、総合戦闘能力に秀でていると評価できよう 。
英国海軍最新鋭空母クイーンエリザベスの極東配備について、現時点では、配備先、配備時期、部隊編成、実施任務など不透明であるが、米国をはじめとするインド、オーストラリア、ASEAN諸国などの「自由で開かれたインド・太平洋構想」に賛同する自由主義陣営の強力な援軍となるのは、確かであろう。
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