米国の雇用統計や小売りの指標で予想以上の改善が見られたものの、米連邦準備制度理事会(FRB)の景気見通しは依然悲観的だ。ブレイナード理事は、米国経済が4月に底入れ後、反動したがその回復ペースが鈍化しつつあるとし、成長を押し上げるために追加で積極的な措置の必要性を訴えた。5月、6月の消費の強さはいくつかの州が時期尚早に経済活動を再開した結果だと指摘。それらの州でウイルス感染が再燃しているということは、今後、その景気反動の勢いが大きく後退することを意味すると説明している。2番底入りも警告。通常はタカ派で知られるハーカー米フィラデルフィア連銀総裁も異例な苦痛をともなう長期にわたる景気減速を警告した。ブラード・セントルイス連銀総裁はFRBの政策による金融危機に発展することが避けられたとし、失業率が急速に低下する可能性もあるとしながらも、7月の雇用の伸びが5月、6月の伸びを下回る可能性を指摘。予測できる将来、低金利を維持することになるだろうとした。

追加緩和では、フォワードガイダンスの強化、資産購入の拡大が実施される可能性が濃厚だ。マイナス金利に関してはコストと有益性を考えてみると米国では機能しないとの見方が大半となっている。イールドカーブコントロールに関しては前回の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録やパウエルFRB議長長会見で明らかになったようにまだ分析が必要との見解。ブレイナード理事も、短中期のイールドカーブのコントロールは支援となるかもしれないとし肯定的な意見を見せたが、もっと後に必要となる可能性が出てくるかもしれないと加えている。バンク・オブ・アメリカが世界のファンドマネジャーを対象に実施した調査では、回答者の54%がFRBが9月のFOMCでイールドカーブコントロールに踏み切る可能性は低いと見ている。

高官らは見通しはウイルスの展開次第としている。また、ウイルスワクチンができるまで完全な回復は困難との見方。一方で、各製薬会社はワクチンや治療薬の開発を異例な速さで進めている。製薬会社モデルナ(MRNA)は初期治験で免疫体の形成に成功したとの報告もあり年内完成の期待も高まっている。年内にワクチンの見通しがたてば成長見通しが改善する可能性もある。





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情報提供元: FISCO
記事名:「 NYの視点:FRB高官は米景気回復ペースに懐疑的、追加緩和を示唆