米労働省が発表した5月JOLT求人件数は539.7万件と、4月499.6万件から減少予想に反して増加した。経済の再開に伴い企業が雇用を再開した。

パンデミック危機により景気後退入りするまで、米国経済は労働市場がひっ迫。求人件数が総失業者数を上回る傾向が今年、3月まで24カ月連続で継続した。パンデミック危機による経済封鎖の影響で4月には失業者数が求人件数を1800万上回った。失業者数と求人件数の差は過去最大を記録。5月にはその差が小幅縮小し、失業者数は求人件数を1560万上回っている。求人1件に対し3.9人の失業者の割合いとなる。

5月の採用は4月から150万人増の648.7万人と過去最高を記録。主に、宿泊施設、食品サービス、小売り、建設セクターでの採用が目立った。5月採用率(Hiring rate)は4.9%と、4月3.1%から上昇。1,2月の3.9%、3.8%、昨年の 3.8%も上回った。

離職は1000万人から410万人へ減少。解雇者数は過去最高を記録した3月1150万人、4月の770万人から大幅に減少し、180万人となった。5月解雇率(Layoffs/discharges rate)は1.3%と、4月5.8%から低下。昨年1.1%はまだ上回っている。

労働市場への自信の表れとされ注目される退職者数は210万人と、4月の188万人から増加。退職率(Quits rate)は1.6%で4月1.4%から上昇も、今年1月、2月の2.3%、昨年2.3%を下回ったままで、労働市場の健全性には依然懐疑的見方が強いようだ。

パンデミックにより2000万人近くが失業中。経済活動の再開に伴い750万人の雇用が回復したが全失業者の職場復帰は容易ではない。パンデミックの収束にまだめどがたたず、企業も再編を迫られる。航空会社などは秋以降の雇用削減計画をすでに発表。米連邦準備制度理事会(FRB)のクオールズ副議長も、今後の不良債権、貸し倒れ引き当ての増加が不可避だと警告しており、今後、再び解雇が増える可能性も十分にあり、依然、予断を許さない状況だ。

■雇用たるみダッシュボード

◎金融危機前に比べ状態が改善                 融危機前の水準
6月雇用者数(Nonfirm payrolls):+480万人(5月+269.9万人)   +16.18万人
6月長期失業率(15週以上):18.7%(5月10.7%、2019年36.7%)    19.1%
5月求人率(Job openings rate):3.9%(4月3.7%、昨年4.6% )      3%
5月採用率(Hiring rate):4.9%(4月3.1%、昨年3.8%)        3.8%
5月解雇率(Layoffs/discharges rate):1.3%(4月5.8%、昨年1.1%) 1.4%

◎金融危機前に比べ状態悪化
5月退職率(Quits rate):1.6%(4月5.8%、昨年2.3%)         2.1%
6月失業率(Unemploynent rate):11.1%(5月13.3%)           5%
6月広義の失業率(U-6):18%(5月21.2%)                 8.8%
6月労働参加率:61.5%(5月60.8%)                    66.1%





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情報提供元: FISCO
記事名:「 NYの視点:米5月JOLTは予想外に増加も予断を許せず、労働市場のスラック存続