当然であるが、HKMA(香港金融管理局)はペッグ制廃止に否定的な見解を示している。5月26日、HKMAのinsightに掲載された「Strong Bedrock Against Challenges」では、「香港基本法第112条では、資本の自由な流れと香港ドルの自由な兌換性が保護されている」と主張する。中国と香港は「一国二制度」を維持し、香港市民の合法的な権利と自由は影響を受けず、外国人投資家の合法的な利益は引き続き法律で保護される。ペッグ制は4,400億米ドルを超える外貨準備高(香港のマネタリーベースの2倍以上)に支えられている一方、銀行システムは強固な自己資本(自己資本比率は現在20%)、豊富な流動性(流動性比率は160%)、良好な資産の質(分類債権比率は0.6%)に支えられているとも説明された。
さらに6月2日の「Hong Kong’s Financial Stability: Facts Speak for Themselves」では、市場の懸念への反論が展開された。一部の銀行の支店で米ドル紙幣が不足したというニュースに対しては、HKMAには米ドルが十分にあること、香港ドルは7.7500から7.7578まで僅かに下落しただけであること、主要銀行からの最新の報告では過去数日間の預金は安定していたことが指摘された。米国−香港政策法に関連して、香港のペッグ制がアメリカに「一方的に取り消される」かどうか、あるいは、香港による米ドル清算システムへのアクセスをアメリカが拒否することができるか、という点については、懸念の存在を認めた上で、「他の地域と同様に、香港は為替政策を含む独自の適切な金融制度を決定することができる」と主張。ペッグ制が導入された1983年10月は、米国−香港政策法が成立するずっと前であり、「ペッグ制は法の下で特別な特権として確立されたのではなく、香港によって導入されたものであり、香港への外交政策の変化のために変更されることはない」と説明された。「ペッグ制はアメリカの許可によるものではない」という反論には一定の説得力があろう。そういう意味では「裏付け資産次第」である。