新型肺炎が台湾人にもたらした悪影響は、健康への脅威または旅行のような物理的な移動の不便だけではない。世界中に高まりつつある「中国嫌悪」の感情も、台湾人が直面せざるを得ない挑戦である。フランスの地方紙の「クーリエ・ピカール」(Courrier Picard)には、過去の「黄禍論」(yellow peril)とも連想させる「黄色いアラート」(alerte jaune)との表現が見出しに使われており、[4]「ウォール・ストリート・ジャーナル」(Wall Street Journal)のコラムには、“China Is the Real Sick Man of Asia”という差別的な含みをもったタイトルの文章が堂々と飾っている。[5]それに、差別は、マスコミの嘲笑から物理的な攻撃へとエスカレートし、例えばイタリアを観光中の中国人が地元の人に唾を吐き掛けた事件が起きた。[6]
こうした中で、台湾人も海外で中国人差別の巻き添えになった。例えば、ロシアの台湾人留学生が公的な場所で罵られたり、殴られたりする事件が発生した。[7]なお、こういった差別事件を受け、海外旅行をする際「私は中国人ではない」と周囲の人が分かるべく、自分の服やリュックや荷物に「I am from Taiwan.」と書いたバッジや貼り紙を付ける、と対策を練った台湾人も出でいる。
[1] 西岡千史、「新型コロナ“神対応”連発で支持率爆上げの台湾 IQ180の38歳天才大臣の対策に世界が注目」、AERAdot.、2020年2月29日、https://dot.asahi.com/dot/2020022800078.html。藤重太、「「日本とは大違い」台湾の新型コロナ対応が爆速である理由」、President Online、https://president.jp/articles/-/33332。 [2] 台湾の輸出はGDPの6割を占める。その中で、対中輸出が輸出全体の4割を占める。 [3] 「WHO會議 我以Taipei名義參加」、『自由時報』、2020年2月11日、https://news.ltn.com.tw/news/politics/paper/1351168。 [4] “Coronavirus: French Asians hit back at racism with ‘I’m not a virus’,” BBC, January 29, 2020, https://www.bbc.com/news/world-europe-51294305. [5] “China Is the Real Sick Man of Asia,” Wall Street Journal, February 3, 2020, https://www.wsj.com/articles/china-is-the-real-sick-man-of-asia-11580773677. [6] 黄雅詩、「義大利疫情引仇華暴力 台僑領建議小心少出門」、『中央社』、2020年2月26日、https://www.cna.com.tw/news/aopl/202002260409.aspx。 [7] Ching-Tse Cheng, “Taiwanese attacked in Russia as Asian-phobia ramps up,” Taiwan News, February 7,