先週の金融庁の金融審議会が、老後資金は一世帯あたり2000万円不足するという試算を出し、ネット等で炎上しています。

実はこの金額、全くサプライズはないはずです。昨年行われた金融広報中央委員会のアンケート調査1でも、全銀協の調査2でも 、必要となる老後資金は今回の試算とほぼ同じ2000万円強でした。それでも、年金制度を担う行政側が公式に不足額を示すなら、確かに若干配慮が必要だったかもしれません。

ただ、現実はやはり厳しく、60歳代の二人以上世帯の金融資産保有額の中央値はちょうど1000万円です(2018年)。従って、いくら金融庁をディスっても、このままでは、老後の収支でアシが出る可能性が高いことは否めません。

一方、日本の場合、金融資産とは別に、それと同額に近い住宅資産(借金を差し引いた純額)を保有しています。金融資産との対比では米国より1~2割程度高くなっています3。ところが日本では、米国とは異なり、中古住宅市場も小さく、リバースモーゲージなど住宅を使って資金を手にするような仕組みも殆どありません。従って、今のところ固定されている住宅資産を生かすことが極めて難しくなっています。背景には、銀行が中古住宅のリスクを取りたがらないことがあります。

この低金利ですから、貯蓄から資産形成へというスローガンも重要だと思います。ただ、日本の市場環境は相変わらず読みが難しい一方、老後資金の問題は待った無しの状況です。視野を広げて、政府も銀行も、個人の住宅も含めた資産全体の活かし方を改めて考えてみることが必要だと思います。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:6/10配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【アナリスト夜話】:老後資金不足=2000万円は本当か?(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)