米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は28日実施されたNYエコノミッククラブでの講演テキストの中で政策に関して、「事前に設定された軌道はない」と、市場を安心させた。また、金利は「中立レンジを若干下回る」と、10月に示した「中立に程遠い」とのタカ派姿勢を緩和した。

パウエル議長の発言を受けて、FRBは12月連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ後、しばらく利上げを見送り、2019年の利上げは1回にとどまるとの見方が強まりつつある。2018年を通じて、米国の住宅市場の弱さが目立つ。自動車大手GMが工場閉鎖や大量解雇を発表するなど、2019年の成長が減速するとの懸念も広がりつつある。

クラリダFRB副議長も昨日27日の講演で、米国経済のファンダメンタルズは強く、来年も景気拡大が続き、拡大期は過去最長になると楽観的な見方を示した。同時に、政策金利の中立水準を見直していくとし、より指標次第の方針に傾斜しつつあることを示唆した。FRBが2015年12月に利上げサイクルを開始したときに比べれば、「中立により近づいた」との見解を示している。副議長も16日のCNBCのインタビューにくらべ、タカ派姿勢を弱めた。

クラリダFRB副議長はまた、「物価連動債市場(TIPS)の数値から個人消費支出(PCE)物価指数は2%をいくらか下回って推移することが見込まれる」と言及。物価連動債の数字によると、金融市場は消費者物価指数(CPI)の上昇率が2%程度で推移することを見込んでいるとした。PCEは歴史的にCPIよりも0.3ポイント程度低くなる傾向がある。ミシガン大消費者信頼感指数の期待インフレも安定の下方にあるとした。

もし、インフレが2%以下で安定したら、FRBは利上げを打ち止めすることが可能になる。一方で、クロリダ副議長も指摘したように目標2%を上回った場合、政策を修正することになるとした。今後の金融政策において、インフレが目標値を上回っていくかどうかが鍵を握る。



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情報提供元: FISCO
記事名:「 NYの視点:米FOMC利上げ打ち止め近いとの憶測が急浮上