今年はリーマンショックから10周年です。これに関する取材なども増えてきましたので、この週末に当時の新聞記事を見直しました。

当時記事には「金融不安」という言葉が溢れていました。そこで、08年8月1か月間の記事をこのキーワードで検索したところ、ヒット数は502件と、前年半年分のヒット件数を超えていました。それだけ多く“不安”という文字を目にし、リーマンの経営破綻前から、市場参加者は相当警戒していたとみられます。

先日、東洋経済オンラインで、『金融の修羅をゆく』という新コラムをスタートしました。そこではさまざまな金融危機の警戒シグナルを例示しました。サムライ債の新規発行や海外の研究機関の指標などを挙げましたが、加えて、こうした金融不安記事というのも一つのメルクマールになるかもしれません。

興味深いのは、当時は、リーマンや米国に対する記事よりも、むしろ韓国など周縁国の金融不安に関する記事が多かったことです。しかし、実際に火の手が上がったのは、韓国ではなくアメリカでした。このように、不安の種は必ずしも“本丸”ではないことも過去多くみられたパターンです。

幸い、先月1か月の「金融不安」の記事ヒット数は85件と、08年8月の6分の1に留まっています。しかし、過去数年の毎8月の10件程度からは急増しています。あの中国元ショックの15年8月ですらヒット数は30件程度でした。市場の不安感が徐々に高まっている印象です。

歴史が繰り返すものだとすると、トルコから別のどこかへの波及が懸念されます。それは、行き過ぎが囁かれる米国の資産価値かもしれませんし、再びイタリアか、貿易戦争渦中の中国かもしれません。いずれもまだ、危機的状態という感じはしませんが、そろそろニュースの風向きはフォローしておいた方がよさそうです。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:9/3配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【アナリスト夜話】:リーマン前夜の不安心理は再燃するか?(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)