トランプ大統領は22日、中国に対して貿易制裁を命じる大統領令に署名した。年500億ドル規模の関税を適用する。トランプ大統領は署名に伴っておこなった会見で、中国が北朝鮮絡みで米国を支援しており、「仲間として認識している」としながらも、「知財侵害はとてつもなく大きい問題」とした。また、米国の貿易赤字のうち、半分以上が対中である可能性があり、中国に「貿易赤字を1000憶ドル削減するよう要請する」とした。また、今回の関税が多数あるうちの第1弾に過ぎず、中国の対応次第で、さらなる関税が課される可能性も指摘した。

これに対し、中国は報復措置も辞さない構えだ。市場では、貿易戦争への脅威が一段と強まり、株式相場は大幅下落した。リスク回避の円買いも加速した。

一方で、トランプ政権は、すでに発表済みの鉄鋼やアルミニウムの関税に関して、各国と免除に向けた交渉を続けている。欧州連合(EU)やFTAの再交渉を行っている韓国、オーストラリアなどを暫定的に免除すると発表。北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉協議を実施しているカナダ、メキシコの免除もすでに発表済み。

ロス米商務長官も、「市場の下落は投資家が不透明性に反応したもの」との見解を示し、「関税が中国の経済にあたえる影響は微少だ」と指摘。米国が貿易戦争を始めたつもりはなく、貿易乱用の修正を目指しているだけだとした。さらに、「貿易方針の相違が激変につながることはない」と、市場の鎮静化に努めた。最終的には「交渉次第だ」とした。

対中の関税も今後、様々な分野での交渉のレバレッジに用いられる可能性がある。これで、何年も手付かずだった古い協定の刷新に向けた交渉が始まることはむしろ、プラスと考えると、逆に株式相場やドルに良い買い場を作った可能性があると見る。




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情報提供元: FISCO
記事名:「 NYの視点:貿易交渉開始へ、良い買い場となるか