短期投機家・投資家の円の売り持ち高は減少した。ユーロの買い持ちは前々週から小幅減少したが、過去最大に近い水準で推移した。このためユーロの上昇は限定的となる可能性がある。

今週は、米国のインフレや小売り売上高に注目が集まる。インフレ指標は、引き続き緩やかな上昇が予想されている。米2月雇用統計では労働市場の堅調な拡大が確認され3月FOMCでの追加利上げをさらに確実にした。賃金の伸びは予想を下回り、1月分も下方修正されたが、市場では緩やかな賃金の伸びを逆に歓迎する動きが強まった。

また政局では、トランプ大統領と北朝鮮の朝鮮労働党委員長金正恩氏が歴史的な首脳会談で合意したことは注意深く楽観的に見られている。さらに、本年の米国の中間選挙の行方を占ううえで鍵を握る13日に予定されているペンシルバニア州南西部18区で連邦下院補欠選挙の結果に焦点が集まる。

トランプ大統領は、鉄鋼やアルミニウムに追加輸入関税を発動したが、特別選挙を見据えた動きとの思惑もある。そもそも、米国経済で製造業の占める割合は3割に過ぎない。ペンシルバニア州、ピッツバーグは製鉄、鉄鋼等の重工業が主要産業。

この地区はまた、共和党支持が圧倒的で、共和党にとり最も安全な地区であった。昨年、スキャンダルで辞任に追い込まれたティム・マーフィー氏は2012年に64%対36%で勝利。またトランプ大統領も総選挙で大差をつけ勝利した。

2018年始めの世論調査によると、共和党候補のリック・サッコーン氏は民主党のコナーラム氏を46%対34%と僅差でリードしていた。ところが、最近の調査で、48%対45%で民主党候補がリードに転じた。民主党候補は、33歳と若く、海軍出身、連邦検事と有力だ。アラバマ州の連邦上院補選では、トランプ大統領が支援した共和党候補が民主党候補に敗れたばかり。ペンシルバニア州の特別選挙は2018年の中間選挙の行方を占ううえで、指針と見られている。共和党が敗北した場合、中間選挙でも苦戦が予想される。中間選挙での敗北は、今後のトランプ政権や共和党の政策実施がより困難になる。

米朝首脳会談が実現し、北朝鮮が非核化を実行すれば歴史的なイベントとなる。ただ、それまでに、北朝鮮が会談を中止する可能性も十分にある。実際、平昌オリンピック参加で韓国を訪問していたペンス副大統領との会談を、北朝鮮が直前に中止した経緯がある。また、会談でも非核化の協定合意ができずに、逆に事態が現状より悪化するシナリオも考えられる。

リビアの前例を見た場合、独裁者、金正恩氏が果たして容易に米国に降参するかどうかには懐疑的な見方も強い。米国の経済制裁を受けて、リビアの独裁者、最高指導者だったカダフィ氏は態度を転換。2003年に核放棄を宣言する。しかし、結果的に政権放棄、反カダフィ部隊に殺害されるという奇跡をたどった。金正恩氏が簡単に米国に屈服しないだろうと、懐疑的な見方も強い。

■今週の主な注目イベント

●米国

13日:ペンシルバニア州連邦下院補欠選挙、
米2月消費者物価指数(CPI):コアCPI
予想:前年比+1.8%(1月+1.8%)
14日:米2月小売り売上高:予想前月比+0.3%(1月−0.3%)、
2月消費者物価指数(PPI):コアPPI予想前年比:+2.6%(1月+2.2%)

●欧州

ドイツ
12日:メルケル独首相、社会民主党と大連立協定を結ぶ
14日:メルケル首相、第4期目就任式
ドラギECB総裁講演

●中国
3−15日:全国人民代表大会開催

●地政学的リスク
北朝鮮
イラン
ガザ紛争
イラク、イスラム過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」
シリア
イエメン



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情報提供元: FISCO
記事名:「 NYの視点:円売り持ち前々週から減少:今週ペンシルバニア州連邦下院補欠選挙、CPIやPPIに注目