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〇補正予算編成へ、アベノミクス柱の政策再注視〇
昨日のNYダウ終値は23435ドル、シカゴ日経平均先物終値は22530円。絶対値差は905に縮まった。少し前までは2000以上の開きがあったので、「米株の上昇が鈍って来たので、日本株にシフトしたヘッジファンドがある」との見立てに肯ける。
手法はかなり荒っぽいロング・ショートによる「決算ラリー」。個別に異なるが、上方修正を買い、下方修正を売る手法だ。商いを伴って、短期間に激しい動きをすることが多い。以前も、特定銘柄の上げ下げで日経平均が振られることがあったが、昨日の日経平均寄与度を見ると、東京エレクトロン98.33円が突出、2位京セラ26.35円、3位日東電工24.49円が続く。10円以上の8銘柄で、日経平均上昇幅(408円)の56%を占めた。結果的にドル建て日経平均を引き上げ、昨日高値は197.12ドル、終値は196.81ドル。200ドルを目指すとの目線は変わらないが、195ドルで止まらずにピッチが加速している。
海外ヘッジファンドが攻勢を賭けてきた要因は、総選挙の自民大勝。アベノミクス再発進に期待する動きとも言える。大雑把なイメージでは、最初の頃、柱と見ていた医療改革や農業改革、海外インフラ輸出などは、停滞感がある。現状の景況感改善に寄与していない。ある程度のレールは敷かれているので、各論でどう弾みをつけるかが注目される。第4次安倍政権の発足記者会見で、安倍首相は「人づくり革命」、「生産性革命」を強調したが、産業別各論は今までの路線ともダブる。規模は明示していないが補正予算編成も指示し、各大臣に仕事をしてもらう必要がある。
このうち、医療改革は早々と診療報酬、薬価引き下げがアナウンスメントされ、難航が予想される(中医協などが強く反発)。農業改革は8月に施行された「農業競争力強化支援法」が柱になる。小さい事例だが、コメ輸出新事業に応募した参加希望者は、生産者200団体、流通事業者33社に達した。目標10万トン(現在2.4万トン)への取組が注目される。経産省は「インフラシステム輸出戦略」に基づき、電力、鉄道、情報通信分野の海外展開戦略を10月31日に策定・発表した。具体的事例が示されていないので、効果が出るのか分からないが、20年30兆円受注に向け、巻き返しの意思表示と受け止められる。TPP11は幸か不幸か、NZの姿勢転換(何処の国でも公約はアッサリ裏切られるものだが)で、米抜き発足に前進と伝えられている。
日銀総裁後継候補の一人、伊藤隆敏コロンビア大教授は、市場の「安倍政権は改憲論議を優先し、アベノミクスは停滞する」との見方を一蹴し、「憲法改正の不人気を打ち消すため、アベノミクスの第3の矢を推し進めることになる」との見方を示した。海外勢の見方を代弁する意見と言え、海外勢の日本株買い持続の条件に、アベノミクス各論が重要になってこよう。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/11/2号)
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