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〇トランプ減税策発表、米金利押し上げ〇
法人税率15%を強く望んでいたトランプ米大統領だが、27日発表の税制改革案は共和党主唱の20%(現行35%)に落ち着いた。個人所得税は現在の7段階から3段階(12,25,35%)に簡素化(最高税率39.6%の引き下げ印象が強い)が柱。最高税率を掛けられている個人事業主やパートナーシップなどのパススルー企業(全米企業の95%が該当すると言われる)に対しては、税率25%が適用される。他に、海外所得課税の廃止、海外留保資金に1回課税、個人所得基礎控除2倍に拡大、相続税の廃止などが主要項目。
どの程度の財政赤字圧迫要因になるか不透明だが、市場は景気拡大効果を評価、共和党主導(元々、税制の立案・決定権は議会にある)での実現性も評価していると見られる。ただ、富裕層優遇などの批判は高まろう。最貧弱者(とりわけ薬物中毒者)切り捨てと批判されたオバマケア見直しが頓挫しているだけに、トランプ大統領は「成果」を求めたい処と見られる。
先週のFOMCで「12月利上げ」観測(金利先物市場の確率78%)が戻って来ていた債券市場では金利押し上げ要因となった。10年物国債利回りは一時8月1日以来の2.316%、2年物では約9年ぶり水準の一時1.483%。2カ月近くグラついた「グレートローテーション」が戻る格好となり、調整色の出ていたナスダックは1.15%高の急伸、NYダウは0.25%高。
一方、マクロン仏大統領は初の予算編成で、高額所得者課税の廃止(オランド前大統領の富裕税)、低所得者向け住宅補助の削減を打ち出した。住宅補助削減方針は既に示されていたが、支持率急落の大きな要因。また、社会保障のための国民負担を一律で増やす方針を示した。EUの財政規律(GDP比3%未満に財政赤字を抑える)を守るためだが、早くも28日に抗議行動が予定されるなど、反発機運が高まる公算。荒れ方でユーロ高基調に変化が出る可能性がある。
日本の小池旋風は、民進党を吹き飛ばした。合流するにしても、民進党は消費増税派、「希望の党」は「消費増税凍結」を有力な主張にしようとしているので、どういう形で一本化されるか注目される。安倍首相が「10%への増税」を公約した格好になっているので、消費増税凍結が盛り上がれば、与党はかなり苦戦する可能性があると見られている。安倍首相の本音は「引き上げ見送り」との指摘もあるが、財界の一部からは「10%以上への増税」を主張する声も出ており、消費増税反対ムードを刺激する恐れがある。
世界的な「格差」問題は沈静化しているが、背後に緊縮財政を巡る攻防がある。金利動向にも影響するため、増減税策の実現度を見て行く必要があろう。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/9/28号)
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