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〇消費増税が焦点へ〇
昨日の日本株は引けに掛けて上げ足を速め、日経平均は1.96%の大幅高となった。原動力は空売りの買戻しと見られる。東証空売り比率は34.40%に急低下、9月5日に45.30%まで上昇し、トヨタを初め、逆日歩銘柄が数多く発生していたことから一斉の買戻し相場になったと考えられる。空売り比率はここ1年間33%台が下限となっており、低水準が定着するかどうかが相場の持続性を見る上で一つのポイントとなろう。
もう一つの要素は為替。週明けのドル円相場はユーロ円の円安に牽引され、終始111円台をキープし、買い安心材料になったと思われる。米FOMCの発表を控え、米10年債利回りが2.2%台に上昇したことが大きいと考えられる。
解散総選挙は、政治の閉塞感突破を睨み、取りあえず買戻す心理に働いたと考えられるが、損得勘定ができた訳ではない。報道では、国連総会から帰国後、25日に安倍首相が記者会見を行い、政策方向性を打ち出す予定。ただ、各紙一斉に「予定通り19年10月に消費税率10%に引き上げ、うち1兆円規模を財源として幼児教育無償化や子育て支援に振り向ける」方針を伝えた。北朝鮮リスクや憲法改正より、身近な課題が争点になる可能性がある。
報道通りであれば、増税派、減税派双方から非難を浴びると思われる。増税派から見れば、使途変更で増税分の8割を財政再建に充てる予定が後退することになる。2020年度プライマリーバランス黒字化目標を放棄する必要があり、2025年問題(団塊の世代が後期高齢者入りし、貯蓄の取り崩しが始まり、財政赤字が一段と深刻なるとの懸案)を指摘す
る声が高まろう。一方、減税派から見ると、ただでさえ弱い個人消費の回復を一段と遅らせるとの非難が出よう。ロイターの9月企業調査で、日本経済は「現状維持で推移する」が73%を占めたが、北朝鮮リスクなどへの対応で政権安定を求める声も64%に上った。同時に、景気対策を求める声も強く、補正予算必要が57%、不要43%を上回った。期待する対策は消費刺激策が43%で、人手不足28%を大きく上回った。折しも、米トイザらスが経営破綻。小売業の苦戦は世界的だが、国内でも小売業の苦境が表面化する可能性が大きい。
政治的に見ると、枠だけしか作れない「小池新党」が飛びつく公算がある。中心になると見られる細野豪志氏は消費増税への慎重姿勢を見せており、選挙戦術として「当面の増税反対」を掲げ、反対ムードの強い女性票の掘り起こしを狙えば、要注意となろう(民進党は増税推進)。
海外の目線は、日本が内需拡大に効果的な手を打てないと見れば、金融緩和の長期化目線が強まり、当面の円安基調を支える要因。外需依存が一段と鮮明になれば、将来の円高リスクを膨らませる要因との見方になろう。足元の物価上昇ペース、個人消費動向に過敏になる流れが想定される。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/9/20号)
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