ニュージーランドの現職国会議員が中国のスパイ容疑で、同国情報機関の捜査を受けていると伝えられた。隣国のオーストラリアでも6月、2大政党が中国共産党とつながりをもつ富豪2人から約10年間にわたり、巨額の献金を受け取っていたことが明らかになった。南半球の2大先進国の内政で、中国共産党が暗躍している。

中国軍の教育機関で養成されたNZ国会議員

 渦中の人物となった楊健議員(55)は1978年、中国人民軍空軍工程学院英文科に入学。卒業後、母校での英語教師を経て1987年、人民軍直属の洛陽外国語学院の大学院に入学、修士号を取得。同校でも英文科の教員として勤務していた。1994年、オーストラリア政府の海外援助プログラムのAusAID奨学金でオーストラリア国立大へ留学、博士号を取得。留学を終え、オーストラリアやニュージーランドの大学で教鞭をとり、のちにニュージーランドに帰化した。その後、政界に転身し、2011年、国民党から立候補し国会議員に初選出、現在2期目。出国前は中国共産党員だった。

 今回の発端は、楊議員が中国軍の教育機関に通っていた経歴を隠蔽していたことだ。とくに、卒業した洛陽外国語学院は、中国軍唯一の外国語大で、外国の軍事情勢を偵察する任務を負う人材、いわゆるスパイの養成を行う。その前身は人民軍793外国語学院で、サイバー攻撃や、外国軍の通信を傍受し技術情報の取得を担当する総参謀部三部の管掌下にある。今年2月、中国軍隊戦略支援部隊信息工程大学外国語学院と改名した。

 疑惑を受けて楊議員は記者会見を開いた。中国軍の教育機関で教育を受けたが、自身は文民だったと主張し、軍との関係を否定した。

 しかし、中国の諜報活動に精通する、元シドニー駐在中国領事館の陳用林一等秘書官は、このたび大紀元の取材に答え、楊議員は「クロ」の可能性は高いと指摘する。

活発な中国企業誘致活動、高い資金力…疑惑が深まるばかり



 陳氏はシドニー駐在中国領事館在職中の2005年、オーストラリアに亡命した。在職中、中国人スパイを管理する立場だった。陳氏によると、

 「中国では軍直属の大学に入学すれば、軍人になる。空軍工程学院を卒業時、中尉だったはず。その後も教員として大学にとどまったため、当時は現役軍人扱いだった」。

 楊議員が主張する文民について、「文民の概念が導入されたのは2013年。それまで軍の教育機関は軍隊として管理されていた。楊議員が利用したAusAID奨学金プログラムは、中国政府の推薦が必須だった」と述べた。

 楊議員はオーストラリア国立大に在学中、キャンベラ学生学者連合会の主席を務めていた。同会は中国大使館が留学生の動向を監視するための団体でもある。「楊議員は中国共産党の信頼を得ている」と陳氏は指摘する。「中国共産党は、留学生団体から素質のある人をスパイとして選んでいる。楊議員がスパイである可能性は高い」。

 中国官製メディア・人民日報は、楊議員が国会議員に初当選したことについて、「中国で高等教育を受けた後、欧米の与党議員になった初の中国人」と持ち上げた。

 同議員の活動にも「中国」がキーワードとなっている。さまざまな中国政府系企業のニュージーランド進出事業のパイプ役を買って出た。乳業大手、内蒙古伊利実業集団(伊利)と政府系・蒙牛集団のニュージーランド粉ミルク生産工場、中国政府系の大手インフラ企業、北京首都創業集団によるニュージーランドの廃棄物処理会社の買収、投資会社、上海鵬欣によるニュージーランドの酪農大手企業の買収などなど。

 「国土があってこそ国がある。中国資本がニュージーランドで企業買収と用地取得を展開しているが、ニュージーランドにとっては鶏を殺して卵を取る行為。楊議員の中国企業誘致活動によってニュージーランドは長期的利益を失ってしまった」と陳氏は述べた。

 楊議員は高い資金集め能力で、国民党の中で評価が高い。ニュージーランドの中国語メディアによると、楊議員は今年、650人の中国人が参加したパーティーを開き、130万ニュージーランドドル(約1億円)の政治資金を集めた。当時、大手メディアは中国人コミュニティーを国民党の「ATM」だと揶揄していた。

 陳氏はこれまでの勤務経験を踏まえて、楊議員が得た政治資金の多くは中国共産党中央統戦部傘下「平和統一促進会」や、中国共産党と深いつながりを持つ中国人富豪から寄付された「赤い献金」だとみている。

 「これは中国共産党の海外浸透戦略の一部。中国共産党の金銭的支援を得て国会議員になった楊議員はニュージーランドにとって紛れもなく脅威的な存在だった」。

日本でも中国スパイが暗躍 



 日本では、楊議員が卒業した洛陽外国語大学の出身者の逮捕者が出ている。2015年3月20日、外国人登録法違反容疑などで大阪府警に逮捕された中国籍の貿易会社代表取締役の男(62)が、諜報部門を傘下に持つ中国人民解放軍総参謀部と定期的に連絡を取っていたと、産経新聞などが報じた。同時に、軍事転用が可能な技術を持つ機械工業メーカーなど複数の日本企業関係者とも接触していたという。警察当局は男が「総参謀部に在籍している機関員」との情報も得たという。

 また、政界に中国のバックグランドをもつ人もいる。民進党の櫛渕万里元議員の夫は中国人。また、中国出身で日本に帰化した李小牧氏は2015年4月、統一地方選挙では、新宿区議選に立候補した。その後、落選している。

 中国共産党が「カネ・ヒト・モノ」で世界中に情報網を張り巡らせている。ニュージーランド保安情報局(NZSIS)は同議員をスパイ容疑で捜査しており、オーストラリア当局も政治献金事件に対してスパイ関連法の検証と外国政府による国政介入の調査を命じた。

 日本には、5万人の中国共産党のスパイが活動していると報じられている。いっぽう、日本では現在、スパイ活動そのものを取り締まる法律がない。

       (翻訳編集・李沐恩)

【ニュース提供・大紀元】




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情報提供元: FISCO
記事名:「 NZ中国出身国会議員のスパイ疑惑 諜報活動に詳しい元中国外交官が分析