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〇トランプ政権大混乱、ドルを押し下げ〇
指名10日で、スカラムッチ広報部長が解任された。28日に解任されたプリーバス前大統領首席補佐官の後任のジョン・ケリー前国土安全保障長官が新補佐官に就任するや否やの決断。スパイサー前報道官もスカラムッチ氏の起用に反対して辞任したとされる。既に、セッションズ司法長官や大黒柱のティラーソン国務長官にまで辞任の噂が広がり、「トランプは年内持たないね」としたり顔で言う日本の評論家まで現れている。政権内部の混迷は相当深いようだ。
今のところ、ジワリドルが売られる程度で、債券、株式相場には大きな影響は見られないが、「秋の大荒れ」に身構える人は増えている様だ。トランプ政策は既に大きく後退、実現性は極めて低いとの見方になっている。オバマケアの代替案移行ないしは撤廃は絶望視され、残る税制改革にも現実論が浮上している。税制改革の障害とされる「債務上限引き上げ交渉」はムニューシン財務長官が再々の要請を行うが議会は動く気配がなく、有力財源とされた「国境税」は断念が表明された。31日、コーンNEC委員長は「大統領は税制改革の年内実現に100%コミットしている」と言明したが、ハッチ共和党上院財政委員長は「15%は言うまでもなく25%への引き下げも困難が予想される」と言及。
当然、大統領の「3%成長」目標も後退(4-6月は2.6%成長)するが、足元の経済状況、企業業績の好調、イエレン金融政策への信頼などが支える構図と考えられる。トランプ大統領の巻き返し云々より、その持続性を問う流れが想定される。
密かな注目点は原油相場の立て直し。31日のWTI相場は50.17ドル/バレル。2ヵ月ぶりに50ドル大台を回復した。需給関係が改善、悲観論が後退し売りポジションが縮小(前週は22%減少し、6月末比半減)していると言う。本来投影されるべきドル安の影響も遅れて出てきているようだ。米原油在庫が1月以来の低水準に減少し、サウジ、クウェート、UAEが原油輸出を減らす方針を表明、米ハリーバートンは「シェール会社がブレーキを踏んでいる」と述べ、「シェールブームがついに原油安に屈する」と書かれた。トランプ失速は開発意欲を殺ぐ方向で働いていると見られる。余談だが、7月26日、石油資源開発はマレーシア国営ペトロナスと共同で開発していたカナダ西岸LNGプラント(総投資額1兆円規模)の建設中止を発表した。原油価格低迷で断念に追い込まれたとしている(相対的に今秋にも豪イクシス案件が稼働入りする国際帝石(1605)が注目される)。
相対的にエネルギー株は低迷しており、見直し余地がある。原油反転が見直しの契機となるか、さたに上昇して世界的なインフレ観にまで影響するか、などが注目点になる。トランプ混乱の行方は原油相場をウォッチしながら眺めて行きたい。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/8/1号)
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