■精神的余裕がないとトレードは勝てない

エムトレ 銀行内のディーラーと個人投資家の取引の違いとは?
山中 見聞きする情報量が圧倒的に違う。情報をベースに短期で取引をするのは、個人投資家にとってはハードルが高い。さらにハードルが高いのは、自分の資金を投資に回さなければいけないこと。銀行は他人のお金で取引をするから、個人投資家に比べると、精神的に楽である。トレードは、精神的に余裕がないと勝てない。だから、個人投資家の場合、証拠金を気にするあまり、余裕のないストップロスを置きがちになることだ。さらに、負ける個人投資家は過剰なポジションを取りすぎている。十分な証拠金がないことと、精神的な余裕がないことも負ける要因だが、圧倒的に思うのは、勉強不足。だから、個人投資家が勝つためには、勉強する必要がある。精神的な余裕を持つためには、過剰なポジションを取らない、十分な証拠金を用意する。さらに、よく言うのが、証拠金の使い方やストップロスの置き方が、頭ではわかっていても、思っていることとは違うことをやってしまうことだ。経験不足が原因だ。

■トレードに必要なのは、体力、計算力、向上心

エムトレ 自分のルールを徹底することができない。
山中 それができるようになるには、経験が必要だ。トレードで重要なのは、意外と思うかも知れないが、体力。次に、計算力。努力する向上心。だから、トレードに向いているのは体育会系出身者。彼らはルールを守り、言われたことはきちんとやる。トレードも明確なルールを守ることは重要で、1929年の大恐慌以降に活躍したカリスマトレーダーのウィリアム・ギャンのルールがあり、そのなかに、明確なルールに基づいてトレードすべしとある。明確なルールを守れるか否かによって、市場から退場するか否かが決まる。
インターネットの普及であらゆる情報がいともたやすく入手できるようになった。為替に関する情報も例外ではないが、各FX会社がリリースしている、著名なエコノミストやアナリスト、ストラテジストのレポートはどの程度の価値があるのか。山中さんは、彼らはトレーダーではないので、読む必要がないとばっさり。情報は事実さえあればいいと言う。ただ、経済指標などの数字をどのように考え、論理的に組み立てていけばいいか、その論理の組み立て方だけは、彼らから得るものがあるという。
さらに、山中さんは、FX取引において、「米ドル/円」など、為替のレートだけを見ている人が多すぎると指摘する。大きな金融市場のなかで、FX市場はごく一部。金融市場には、長期金利市場や短期金利市場、債券市場、株式市場や商品先物市場もある。不動産市場も金融市場の一環としてとらえてよい。広い金融市場で今、注目すべき材料は何かを探し、それを元にどんなトレードができるか、自分でそのシナリオを組み立てられるような、トレーダーにならなければいけないと、語気を強める。ただ、こればかりは努力するほかはない。

■考える投資家になる

エムトレ FXがギャンブルの枠組みにとらえられている。
山中 バイナリーオプションが要因かも。ただ、上がるか、下がるか、ある意味、真実もそこにある。レートが1円下がるのか、上がるのかわかれば儲かるのはその通りだが、それを分析するのに、サイコロを振ってでは困る。レートが上がるのか、下がるのか、どちらの可能性が高いかを考えて、その時にどんな材料があるのかをきちんと相場の動きに結びつけられるかどうか、そこが大きなポイント。
エムトレ そこまで考えられる人の割合が圧倒的に少ない。
山中 もっともいけないのは、そういうことを言うと、面倒くさいと言う人。だったら、やらないでくださいとなる。
エムトレ 勝つには当然、努力が必要。
山中 努力なしで勝てる人もいるが、それはほんの一握りの天才。真似ができない。天才でない人は努力をするべきだ。

■メディアは華やかさばかりを取り上げる

エムトレ 日本人は勤勉といわれているが、FXになるとそうでもない。
山中 未だに、FXは楽して儲かるというイメージがあるからだ。だが、そんな甘い世界ではない。
エムトレ なぜ、そんなイメージになったか?
山中 メディアが一因だが、儲かる部分にだけスポットをあてすぎる。そこに至るまでの過程が本当は重要で、個人投資家の参考になる部分だ。華やかな部分、目立つ部分だけが一人歩きをしてしまい、新たにFX取引に参入してくる人たちが勘違いをしやすい。
損失はどこまでと考えたらいいのか。山中さんは、ヘッジファンドでも証拠金の5%以内に抑えるといって、個人投資家の場合は、証拠金のせいぜい2%以下に損失は抑えるべきだという。

■テクニカル指標は使いやすいものを選ぶ

エムトレ FXを始めるに当たって、どんなテクニカル指標を選んだらいいのか?
山中 代表的なテクニカル指標を知ったうえで、その種類のなかから使いやすいものを選ぶ。ただ、テクニカル指標の特性や本質をしっかり把握することが大事。たとえば、トレンド系の指標である移動平均線は、文字通り、マーケットの振れを吸収して均しているので、その分、遅延が発生する。買われすぎ、売られすぎを見るオシレーター系の指標では、RSIやストキャスティクスがあるが、その使い方について、テクニカル指標の教科書に載っているような解説では、売買できないことがけっこう多い。だから、他人から推薦してもらうのではなく、自分でパラメータの数字をいろいろ変えて、試して、吟味する必要がある。そのなかで、一番使いやすいものを使えばいい。

■まずは、ボリンジャーバンド、移動平均線、RSI

エムトレ お勧めのテクニカル指標を3つ選ぶとすれば?
山中 私が使っているテクニカル指標は特殊なものが多い。たとえば、ハル移動平均線。加重移動平均線のバリエーションのひとつ。追従性を高くしつつ、ダマシが少ない。昔も今も重要なのはローソク足の足型。どういう傾向の時には、ローソク足がどんな挙動を示すかを知ることが本当は重要だ。面倒くさがり屋に向いているのは、ひとつのテクニカル指標ですべてがわかるのが、「ディレクショナル・ムーブメント・インデックス」。主に3つの線から構成されている。たとえば、売買のシグナルである+DIと−DI、+DIが上になっていれば買い局面、−DIが上にあれば売り局面。あとは、ADX。これは、トレンドかもみあいかを示すテクニカル指標だ。
ほかに学ぶとすれば、ボラティリティ系のテクニカル指標の代表であるボリジャーバンドの幅の広がり、移動平均線の傾き、RSIの正しい見方。まずは、この3つから入っていっていく。この3つでわかるのは、トレンドの方向性とトレンドがいき過ぎているかどうか、もみあい相場なのか、方向が出ている相場なのか、だ。
世の中の投資家の多くは、テクニカル指標をちゃんと見ていない、と山中さんは指摘する。テクニカル指標の特性や本質を見抜くためには、1000枚のチャートを見る必要があるという。そんなに多くのチャートとではなくても、最低でも200枚から300枚のチャートを見続けていると、テクニカル指標の本質が見えてくるはずだ。そうやって見つけたテクニカル指標の新しいルールを本に書く。最近では、山中さんだけではなく、テクニカル指標の本質を見ぬいたトレーダーがネットで記事にしているので、それも参考にしたらいいと、山中さんは言う。

■テクニカル指標が正しいかどうかをチェック

山中 テクニカル指標の本を読んで、画面上でそのテクニカル指標を見ても、わかるわけがない。テクニカル指標を印刷して、じっくり眺める努力をしてほしい。
エムトレ 書いてあることを、画面上で気づかないと、自分のものにはならない。
山中 FX会社によっては、微妙に計算式が違うので、この数字が出ている根拠を逆に計算して調べる。そうでないと安心して使えない。実際、間違っているものもある。MT4の一目均衡表は間違っている。正しいのを自分でつくる。
エムトレ そこまで極めていかないと……。
山中 オタクの要素は重要だ。何ごとも努力だ。
投資家にぜひ読んで欲しい本を尋ねられると、山中さんはイの一番にNHK出版の『投資家のための金融マーケット予測ハンドブック』を挙げた。バンク・オブ・アメリカや日興時代に、取材などで電話してくる人に勧めていた本だ。自分の部下全員にも読ませた。何かやるときには、この本を必ず教科書に使う。この本は、金利や各国の経済指標など、金融マーケットの教科書で、実際に、銀行が書いているので、何を見ればいいかが非常によくわかる。ファンダメンタルの勉強になる。
次に挙げたのが、自著『テクニカル指標の読み方・使い方』。テクニカル指標の簡単なことがわかった人が次へのステップのために読むと参考になる本だ。ここが買い、ここが売りを示しているので、使い勝手がいいのではないかと言う。紹介しているテクニカル指標が多すぎるので、必要なものだけを読んで参考にすればいいそうだ。
あと資金管理が大事だが、なかなか良い本がない。しかしと言って、推薦したのは、パンローリングから出版されている『ラリー・ウィリアムズの短期売買法』。この本の資金管理の項目は重要だと断言。このほか、トレードとは直接関係がないように見えるが、トレードと非常に関係のあるのが英語の勉強だ。日本語の本を日本で買うよりは、海外の本を買ったほうがはるかに安いケースがある。海外ではFXの雑誌も多い。さらに、日本語の本に比べると、英語の本は読者が10倍はいる、10倍の本があるから、日本語だけの世界にいるよりは、より広い世界に触れることが可能だ。山中さんがよく言うのは、「相場が好きだけど、英語がちょっと苦手だ」という人には、「じゃあ、勉強しましょうよ」と。金融の世界は、圧倒的に情報発信は欧米が多い。英語の勉強は侮ってはいけない。

■マーケットには敬意を払う

エムトレ 読者に向けてのメッセージを。
山中 どんな動きがあろうと、マーケットが正しい。だから、常にマーケットに敬意を払い、相場の動きについて、マーケットが間違っているとくれぐれも思ってはならない。そして、努力。



【ニュース提供・エムトレ】




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情報提供元: FISCO
記事名:「 個人投資家は、常に勉強と努力が必要 マーケットには敬意を持って接すること