2017年6月27日(火)14時から、トレイダーズ証券株式会社【関東財務局長(金商)第123号】主催のセミナーが開催された。セミナーは同社の大会議室を使って行われ、何とお茶に茶菓子まででるサービスぶり。今回のセミナーは初心者を対象としたもので、講師は、トレイダーズ証券でディーラーを務める井口喜雄さん。やさしい語り口調と丁寧な解説が評判だ。セミナーは、第一部「トレード基礎編」と第二部の「トレード応用編」の二部構成だった。

■どの通貨ペアを選ぶのか

井口さんはまず、取引を始めるためのステップから話を切りだした。
「最初に、どの通貨ペアで取引をするかを決めます。初心者ですと、馴染みが深いと思われる『米ドル/円』がお勧めです。南ア・ランドやトルコリラなどの新興国通貨は、ボラティリティが低いし、突然急騰急落することがあるので、初心者にはお勧めできません」
「米ドル/円」などの主要通貨ペアは、取引量が多いので、スプレッドが狭いし、値動きが安定する。逆に、取引量の少ない通貨ペアだとスプレッドは広がるし、値動きも安定しない。ではなぜ、通貨量の少ない通貨ペアは、スプレッドが広がるのかといえば、たとえば、マーケットメーカーが買いのオーダーを受けたとしても、売り手がなかなか見つからない状態であるので、売り手を探すのに時間がかかる。その間にレートが変動すれば、損失が広がる危険性があるため、スプレッドを広くして損失の穴を埋めるようにするからだ。
その後、トレードスタイルの決め方や、テクニカル分析の話しに入り、トレンドとレンジの見分け方の解説が続く。
トレンド相場とは、レンジ相場とは何かといったことから、サポートラインと、レジスタンスラインを引くことで、マーケットがトレンドなのか、レンジなのかを確認することができると、井口さんは説明をする。
そして、あるチャートを示して、「このチャートはトレンドか、レンジ相場かわかりますか」と参加者に問いかけた。
「直近の高値安値をブレイクしたらトレンド相場です」

■ローソク足の見方

次に、ローソク足の説明に入った。「ローソク足とは何か」といった基本を解説しながら、プロのディーラーはローソク足の何を見ているか、ということで、次のように解説した。
「まず、実体の大きさを見ます。次に、ひげの長さを見ます。そして、1本前の高値安値を見ています」
だから、プロのディーラーが注目するローソク足はとてもシンプルだという。
まず、大きな実体が現れると相場の転換点となりやすい。突然現れる大きな実体は、トレンド発生の可能性が高い。売り手と買い手の攻防に決着がついて、一方的な展開となったときに出現する。
さらに、トレンドの終焉に出現するひげを見逃さないこと。長いひげはその価格帯をマーケットが否定したことを意味している。
そして、1本前のローソク足は、重要で、高値安値を頭に入れておく。それは、一番身近なサポートとレンジスタンスになるからだ。

■お勧めは移動平均線とボリンジャーバンド

その後、第一部の最後として、「テクニカル指標を使って取引をしてみよう」というコーナーに。テクニカル指標は何を使ったらいいのか、とくに、初心者は迷うところだが、井口さんが勧めるのは、移動平均線だ。世界中でもっとも多くの投資家が使用しているから、優位性があるからだ。プロディーラーの多くも、メインのテクニカルとして使用している。使う時間軸は、5日線、21日線、75日線、200日線が中心だ。
使い方は非常にシンプルで、移動平均線よりチャートが下にあれば、売りでエントリー。逆に、上にあれば買いからのエントリー。
さらに、移動平均線についての説明を終えた後、ボリンジャーバンドの説明に移った。ボリンジャーバンドも人気の高いテクニカルで、標準偏差(σ)による統計アプローチにより、相場の反転を判断するものだ。基本的な使い方は、プラスマイナス2σの時に、サポートとレジスタンスとして使うことだ。そのポイントは、中央線が水平なときに使用すること。
ボリンジャーバンドの特徴のひとつとして、「バンドウォーク」がある。プラスマイナス2σを超えて、バンドが拡大したときには、マーケットにそのままついていくのがベスト。その後は、1σを割り込むまでポジションは持ったままにしておく。このプラスマイナス2σとプラスマイナス1σの間を沿う動きを「バンドウォーク」と呼び、これをとらえることができれば、最高の成績に繋がるという。
と、ここまで説明して、第一部が終了した。

■経済指標とは何か

10分間の休憩をはさんで始まった第二部は、「ファンダメンタルズ分析」がテーマ。経済的な要因によってマーケットを予測するのが、ファンダメンタルズ分析だ。まず、経済指標から説明が始まった。
経済指標とは、いうまでもなく、各国の公的機関が発表し、経済を構成する要因を数値化したもので、過去の変化を正確に把握できるため、将来の価格の方向性を予測できる。では、重要な経済指標とは何か。1位は政策金利、2位は雇用統計、3位はGDP(国内総生産)、4位は物価指数。そして、景気サイクルを覚えておくと、トレードに役に立つといって、景気が上向く→インフレ→金利を上げる→通貨が上がる、というのが基本的な構図だと説明。
仕事が忙しくて、上記に挙げた経済指標すべてを見ることができないという人は、少なくとも、政策金利だけは常に見ておいたほうがいいと、井口さんは指摘する。

■市場のテーマが何かを見極める

次に大事なのが、現在のマーケットは何がテーマで動いているかである。それを知ることが、相場の動きを読むひとつの目安となる。2017年上半期のテーマは何だったのかといえば、1月から2月にかけては、アメリカ大統領のトランプラリーだった。トランプ大統領が選挙公約として掲げた政策を実行できれば、米ドルは上昇するが、政策が修正されたり、実行できなくなったりすれば、米ドルは下落する。現実は、トランプ大統領が掲げた政策は何一つ実行されていない。そのため、「米ドル/円」は111円台から112円台で、右往左往している。
次に、北朝鮮の地政学的なリスクである。核実験が強行されれば、円は上昇するが、核実験回避だと円は下落する。そして、4月のフランス大統領選挙。マクロン氏が勝利したのでユーロは上昇、もし、ルペンが勝利していたら、ユーロは下落していた。さらに、6月のアメリカの金融政策で、利上げがされるかどうかだったが、市場は利上げを折込み済だったこともあって、そんなに米ドルは上昇しなかった。だた、利上げペースが加速するようなことがあれば、米ドルは上昇し、利上げペースが鈍化すれば、米ドルは下落傾向になる。
このように、そうだとははっきりいえないが、市場はテーマによって大き動くことは間違いないので、投資家は常に、いま市場は何に注目が集まっているかを知っておくことが大事だと、井口さんは強調する。

■リスクオンとリスクオフ

次に、リスクオフ、リスクオンの説明にうつった。これも為替の世界ではよく聞くキーワードである。覚えおくのは非常に重要だ。まず、リスクオフ,リスクオンとは何か。
「景気が改善したり、政権が長期的に安定したり、金融も安定し、地政学リスクも収束するなど、市場の楽観論が高まると、リスクオンになって、ポンドや豪ドル、カナダドル、新興国通貨が上昇する。逆に、景気が減速したり、政権が不安定だったり、金融危機が訪れたり、地政学リスクが悪化したりすると、市場はリスクオフとなり、円やフラン、米ドルが上昇する。ポイントとしては、リスクの変化にもっとも敏感なのは『円』ということを覚えておこう」
従って、結論からいえば、ファンダメンタルズで重要なのは、次の3つのポイントになる。
 (1)経済指標は基本である金利動向をチェックする。
 (2)膨大な情報から見るべきテーマを選択する。
 (3)市場のモメンタム(相場の強弱)から、リスクオン/リスクオフを見極める。

■市場別の特徴をつかむ

その後、為替はどんな市場参加者がいるのかという説明を行い、投機筋のポジションを把握しておくことが重要だと指摘。さらに、市場別の特徴では、東京市場では、仲値が発表される9時55分までは、「米ドル/円」は上昇するが、10時過ぎからは下落する傾向になると解説。そして、午後はレンジ相場へ移行するので、初心者にはお勧めの時間帯だという。さらに、15時から16時になってくると、ロンドン勢が入ってくるので、ここからは相場の様相が一変する。
ロンドン市場、ニューヨーク市場の特徴を述べた後、結論として、井口さんはこう指摘した。
「市場がオープンする時間帯がねらい目であること。いつも同じ時間帯でトレードをすることが重要である」

■損切りを徹底する

そして、リスク管理の重要性に移った。ここでは、負ける投資家の心理を解説。そして、プロスペクト理論を引き合いに出し、「人間は買ったときの喜びよりも、失う恐怖のほうが大きい。つまりは、損はなるべく避けたい。できれば、損切りをせずに勝ちたいという本能がある。この解決策は、損切りを徹底するほかはない」といって、損切りのポイントを挙げた。
 (1)サポートやれ辞すタンスのポイントで損切り。
 (2)テクニカルのポイントで損切り。
 (3)100円、110円といった心理的な節目で損切り。
 (4)ファンダメンタルズ悪化で損切り。
 (5)根拠がなくても、決めた値幅で損切り。
そして、チャートで実際に損切りのポイントを示して、第二部の講義は終了した。
続いて、質疑応答にうつり、16時30分過ぎに、トレイダーズ証券のセミナーは無事に終了した。井口さんの丁寧な解説に、初心者は為替取引の理解を深めたことは、参加者の多くが満足そうな表情を浮かべていたことからも、うかがい知れた。そういう意味では、有意義な時間を過ごせたのではないか、思った。


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情報提供元: FISCO
記事名:「 「はじめてのFX取引」初心者コース会場型セミナーに潜入